現在は無償となっている、義務教育の教科書。かつては有償だった時代もあったそうです。
日本国憲法26条により「義務教育は、これを無償とする」という規定があることから、有償はおかしいのではないかという意見があがりました。また家計負担が重いという声も上がりました。
住民運動を背景に
1961年、高知市の住民らが、小中学校での教科書代の負担が大きい・日本国憲法の規定からみてもおかしいのではないかなどとして、地域の小学校・中学校に子どもを通わせる保護者を中心に、教科書無償化を求める運動が起きました。
高知市での取り組みが、教科書無償運動発祥の一つともいわれています。
その後教科書無償化を求める声は全国に広がりました。
同時期には東京都の当時小学校2年児童の保護者が、憲法26条を根拠として、義務教育期間中9年分の教科書代金の徴収停止と、すでに支払った年度分の返還を求める訴訟を提訴しました。
これらの動きを受け、議会でも多くの会派の議員が教科書無償化問題を取り上げるようになりました。
1962年に義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律が、1963年に義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律がそれぞれ制定され、教科書無償化の道筋が付けられました。

最高裁の判例
義務教育教科書費国庫負担請求訴訟では1964年、「憲法26条の規定は授業料の不徴収を意味し、教科書の無償化までは意味しない」として原告側の上告を棄却する判決が確定しました。
一方で最高裁では、「教科書の無償をどうするかは立法政策の問題として解決すべき事柄である」とも指摘しています。
現行の教育行政では、前述のように、最高裁判決が出る前に世論に押される形で立法政策の観点として教科書無償化が実現しています。
またそのほかの学用品・給食費などの負担軽減策についても、自治体独自で施策をとっているケースもあります。