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石川県立高校で2023年1学期、生徒からの発案で「総合的な探究の時間」にLGBTQ+当事者を招いて話を聞く機会を作りたいという動きがあったが、学校側に止められて実現しなかったとされている。
このことについて、石川テレビ2023年8月21日の放送『「LGBTQ+当事者を招いて話を聞きたい」高校生の提案を学校側が却下…校長は「生徒の言葉で発信すべき」と説明』が、詳細を掘り下げて取材している。
経過
当該校では、総合的な探究の時間でジェンダー問題を調べていたグループが、LGBTQ+当事者に話を直接聞く機会を設けたいとして、当事者団体や学校側と交渉した。
当事者団体側は快諾したものの、学校側からストップがかかり、中止になったという。
結局、夏休みに校外で、生徒有志の企画として、当事者に話を聞く機会を設けた。
この問題について石川テレビでは、関係者への取材を総合する形で、事実関係について触れている。
当事者団体関係者は「学校側から『政治的中立に反する』と指摘されて、校内での取り組みは中止になった」と聞いたと訴えた。
生徒は、以下のように話したという。
最初は学校で企画しようとしていたんですけど、校長先生とかに止められてしまって。LGBTQ+の当事者団体の人を学校に呼ぶのはダメと言われてしまったので。学校でイベントを開催することはできませんでした。
その一方で、当該校の校長へもインタビューしている。校長は、生徒側から「LGBTQ+当事者を呼んで話を聞きたい」という話があったが、最終的には断ったことを認めた上で、その経緯については「政治的中立が理由ではない」として、以下のように話している。
確かに当事者の方をお呼びして直接話してもらうというのは、それ自体は国の法律も制定され、県の条例も制定していく中で、理解促進ということではもちろん否定はしないんですが、まずは生徒たちが調べたことを、生徒たちの言葉で他の生徒に発信すべきではないかと。そういった趣旨で今回の提案はストップという流れなんです。
記事では、馳浩石川県知事の見解も出している。馳知事は高校教員の経験もあり、国会議員・文部科学大臣を歴任した。国会議員時代には、「LGBT理解増進法」の法案作りにも携わっていた。
馳知事はこのように述べたという。
基本的にまず、学校側の判断を尊重したいと思います。生徒から申し出があったら、できる限りその申し出に応えて欲しいと同時に、講師をされる方がどういう方なのかということも踏まえて総合的に学校長が判断される。
私見
この問題では、生徒側の主張も、また校長や知事の対応も一理あるとは感じる。どちらが正しくてもう一方が誤りと単純に判断できるようなものではないのだろう。
「自分たちの調べたことを自分たちで発表する」というのも、教育的観点からみれば重要なことではある。その意味では、校長の見解が間違っているというわけではない。また「学校側の対応を尊重」というのも、知事や教育行政としては重要な論点である。
一方で、生徒側の提案を拒否するということまでは、根拠が弱かったのかもしれないとも感じる。「当事者団体関係者の都合と、学校側の日程的な都合とがあわなくて時間がとれない」などの別の理由があるならともかく、「自分で発表する機会」と「当事者の話を聞く」というのは相対立するような内容ではない。両立は可能なのではないかとも感じる。
今回の個別案件については「学校側の判断を尊重する」というほかはないのだろう。一方で、その判断の内容については研究・検討し、次の機会に生かしていくことが大事ではないかとも感じる。