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大阪府教育庁が2024年2月28日までに、公立高校入試の日程について、将来的な見直しを検討していることがわかった。

私立高校完全無償化による私学志願者の増加と公立志願者の減少が、背景にあるとしている。

経過

大阪府では維新の府政になってからの十数年間で、公立高校学区制の廃止、公立高校入試制度の複雑化、「チャレンジテスト」導入、大阪市立の高校を府立移管、条例により「3年連続定員割れの高校は廃校を検討」と明記、それに伴う公立高校つぶし、など、公立高校に関する数々の改悪がおこなわれてきた。

さらに私立高校の無償化も打ち出されている。当初は所得制限ありの無償化だったものの、2024年度入学生より段階的に、家庭の所得にかかわらず「私立高校授業料の完全無償化」も打ち出した。この制度は、生徒の授業料を大阪府が負担し、生徒からみれば実質無償化になる一方で、大阪府が授業料の上限額を設定して、上限額を上回ったものは自己負担となる制度でもある。そのため、無償化といっても、私学にとっても教育条件低下を招きかねない危険性があるとも指摘されている。

また私学では、授業料以外の諸経費の負担が重く、その分の費用が生徒にのしかかってくることにもなる。「3年連続で定員割れだと廃校」の方針が適用されて廃校となったある大阪府立高校では、私学の学費負担に耐えかねて転入してきた生徒を積極的に受け入れていたともされている。

現行の大阪府の高校入試制度では、私学は2月上旬、公立は一部専門学科を除いて3月に入学試験が実施される。

一方で私学無償化方針により、私立高校への志願者が増加し、その一方で公立高校への志願者が減少する傾向が進んでいる。

2024年度の志願状況を見ると、2年前の2022年度と比較して、私学志願者が約1600人増加した一方、公立希望者は約2400人減少したとされている。卒業見込み者に占める公立志願者の割合は2024年度に初めて6割を切ったとしている。これは、現行の高校入試制度が始まった2016年度以降、過去最低を記録しているという。

雑感

私学無償化と「公立高校つぶし」は一体だという指摘は、私学無償化制度の構想が出てから常にいわれてきたことではある。

当初は所得制限付きの一部無償化、とはいえども大半の生徒は無償化になるシステムだった。そして2024年度より導入される、所得に関わりなく完全無償化の制度によって、私学志向と公立離れが加速しているということにもなる。

そして公立高校の側でも、大阪府条例での「3年連続定員割れの学校は、統廃合・再編を検討」、すなわち廃校も視野に入ってくるという規定により、また実際に、主に周辺部の公立高校で実際に廃校が決定したことにより、私学無償化と公立高校の統廃合は、元々は別個のものではあったにもかかわらず、結果的に密接な関連を持つことになってしまっている。

これらの大阪府の教育政策、とりわけ高校に関する施策のまずさは、大阪府および維新府政が自ら招いているとしか思えない。

入試制度・入試日程の見直しはともかく、実施するにしても同時に、私学無償化制度の再検証や公立高校統廃合施策の見直しなど、総合的な対策を取らなければならないだろう。

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