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男女別学の公立高校が残っている埼玉県で、公立高校共学化の議論が進んでいる。

埼玉県は男女共同参画の視点から、男女共学化の方針を示した答申を出している。その一方で、ある別学校の在校生や出身者からは、共学化反対・別学維持の意見が強く、難航しているとされる。

ある男子校の埼玉県立高校では2024年3月半ば、在校生や、2024年3月に卒業したばかりの生徒が集まり、埼玉県教育委員会の担当者と話し合いの場を持ったという。生徒らは話し合いの場で、「共学化反対」「別学維持」を訴えたとしている。

生徒らは、学校で実施したアンケートでは、8割が「共学化には反対、あるいはどちらかと言えば反対」だったとして、「別学は多様性」などと訴えた。

経過

現在の高校相当年齢の生徒が通学することになる、戦前の旧制学校制度では、進路の複線化および男女別に進路の違いを余儀なくされていた。

旧制の学校制度では、中学校(旧制中学校)、高等女学校、実業学校の制度があり、それぞれ男女別学で教育課程の内容も異なり、進学できる上級学校にも違いがあった。当初はそれぞれの学校の根拠法令も異なっていたが、中等学校令にまとめられた。

太平洋戦争の敗戦を経ての改革の一環として、教育制度にも問題があったとして、学制改革がおこなわれた。従前の男女別学制度にも問題があったと指摘され、1947年に施行された教育基本法では、男女共学が明記された。教育の場での男女平等を求めた目的があったともされる。もっとも2006年に第一次安倍晋三内閣が改悪した改定教育基本法により、現行法では男女共学が明記された条文は消えている。しかしながら男女共学については、日本国憲法やほかの各種法律・社会状況などを総合的に勘案すると、現在でも引き続き当然の前提として生きていると見なされるべきものではあろう。
学制改革の一環として、1948年に旧制中学校・高等女学校・実業学校を基盤にして改編する形で、新制高等学校の制度が導入された。新制高等学校の設置の際、「男女共学」「小学区制」「総合制」の、「高校三原則」と呼ばれる制度が導入されることとなった。そのことから「近隣の男子学校と女子学校の統合、あるいは生徒交換」などの手法で、男女共学化が進められた。

しかしその制度の具体化は、制度推進を担ったGHQの担当者によって温度差があったともされている。男女共学が強力に徹底された地域があった一方で、北関東や東北では担当者の指示が比較的弱かったとされる。そのため、北関東や東北を中心に、旧制中学校が男子校の新制高校に、旧制高等女学校が女子校の新制高校に、それぞれ移行・改編された事例が目立ったとしている。

これらの県を含めて全国的に、学制改革以降に新設された高校では、特殊な事例を除いて、ほぼすべてが男女共学として設置されている。

またさらに、このことは、戦前の旧制学校の歴史を汲む学校=別学=名門かのような勘違いを生むことにもなり、よろしくない状況も生み出している。

男女別学が残る地域では、長年放置されてきたものの、共学に移行する動きが出ている。宮城県では紆余曲折を経て、2010年度入学生以降は別学校を男女共学に移行した。

男女別学の公立高校が残る埼玉県でも2023年8月、男女共同参画の視点から、男女別学校をなくすことが好ましいとする答申が出された。関係者からの意見聴取を経て、答申発表から1年後の2024年8月までに報告をおこなうことを求められている。

このことを受け、埼玉県教育委員会は、男女別学の埼玉県立高校12校の関係者への意見聴取を進めている状況だとされる。

雑感

一般的にいえば、その場で学ぶ当事者である生徒の意向が重要視されるべきではあろう。その一方で、日本国憲法や関連の諸法規・社会状況などもあり、この場合は単純に「生徒の意向を尊重」とまではいいにくい状況もある。

約76年にわたって行政の不手際が放置されていたということにもなる。当事者の意向はそれはそれとして一般的には重要ではあろうが、それ以上に、残念ながらその施策が時代に合わずに瑕疵があるということから、当事者へのていねいな説明は必要ではあるが、できるだけ速やかに是正される必要がある。

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