当ブログは2024年8月以降、新サイト(https://kyouiku-blog.hatenablog.jp/)で更新をおこなっています。
大阪府の「私立高校完全無償化」が、公立高校にも影響を与えている。
これまでにもいくつか報道されているが、産経新聞2024年3月30日(ウェブ版)『「これほどとは…」公立高で70校の定員割れ 激震の大阪府教育庁、私学無償化策の波紋』でも記事になっている。
私学無償化策で、大阪府内の私立高校の授業料は無償化される。大阪府が授業料相当額の補助を学校側に交付する形になる。
このことで、公立高校の志願状況にも影響を与えているという。
大阪府では、私立高校の入試日程が2月上旬と早く、公立高校では遅めの3月に設定されている。このことで、無償化によって「進路が早く決まった方がいい」という観点から、私学に志願者が増え、公立高校への志願者が減少する傾向がある。大阪府の担当者も、「想定以上の状況になった」としているという。
また橋下府政以来の高校入試改悪や高校改悪で、学区制撤廃・高校入試問題の複線化・いわゆる内申点(調査書での評定)の扱いの問題・「チャレンジテスト」などの制度が導入されて生徒に負担となった。「3年連続定員割れの高校は再編整備を検討」とした大阪府条例の存在も、高校現場に重くのしかかっている。
その結果、公立高校の統廃合が加速することにもなる。とりわけ周辺部では。地域から公立高校がなくなった、あるいはなくなりかねないなどの声が聞かれ、また徒歩や自転車で通学できる学校がなくなることで通学定期代などの負担が重くのしかかるなどの状況も生まれている。
一方で私立高校の選択肢が増えるのかといえば、それほど単純な話ではない。授業料以外の制服や教材費などの代金が、公立高校と比較して高額になる傾向がある。ある公立高校では、以前に在籍していた私立高校でそれらの諸経費が支払えなくなった生徒を、転校などの形で積極的に受け入れていたが、その公立高校も統廃合対象になったという事例もある。
これらのことから、公立高校がセーフティーネットとしての役割を果たせなくなるおそれも生じることになる。
一般論としていえば、生徒の自己実現のために選択肢があった方がいいとはいえるし、行政としても教育権から経済的補助も含めた必要な制度を作ることは重要であろう。
しかしながら大阪府の制度設計には重大な問題があり、「公立高校つぶし」であり、またそれに一定のめどがついた将来には「私学つぶし」にもつながりかねない、生徒の選択肢を奪う異常な状況となってしまっている。
定員割れの状況についても、一部の進学指導に特化した学校では高倍率となり、その一方で中間的な普通科高校や、専門学科高校では定員割れの傾向が生じている。2024年度大阪府公立高校入試で、府内最大の倍率の1.5倍となった学校は、進学指導に特化した「文理学科」を設置する学校である。、一方で府内最小の倍率の0.3倍となった学校は工業高校で、近い将来に募集停止・統廃合の方針も取り沙汰されている。
大阪府では2009年(橋下府政時代)の高校入試で、折からの不況の影響で、公立高校に志願者が殺到し、二次募集や定時制募集を経ても中学校卒業後の進路が決まらない生徒が100人以上出た苦い教訓から、それ以降は、中学校卒業予定者に対する公立高校募集定員には、若干の余裕を持たせている。そのことが逆に、大阪府条例により「定員割れ→統廃合検討」へと利用されていることにもなっている。
これらのことが複合し、おかしなことになってしまっているのではないか。