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imidas2024年4月6日配信で、『大阪市立小学校、「現場から市長に向けて声をあげた校長先生」の奮闘~公教育のあるべき姿を問い続ける』とする記事が掲載されている。
大阪市「オンライン授業」と校長提言
コロナ禍まっただ中の2021年、大阪市では松井一郎大阪市長(当時)が、教育委員会や学校現場との調整などはなしに、「緊急事態宣言が出されれば、市立学校をオンライン授業にする」と打ち出した。
このことは現場に大きな衝撃を与えた。ごく一部の「ICT活用推進校」以外は体制が整っていないことや、市の回線自体も全校対応にするには貧弱であったことなどの問題が指摘された。
その結果、市立の小学校では、午前中の1・2時限目の授業をオンラインやプリント学習などとし、その後3時限目以降に登校しての対面指導や給食と併用する扱いとなった。
これらの措置に対して、ある市立小学校の校長が、児童や保護者の状況を把握する調査を実施した上で、松井市長宛に提言をおこなった。
しかし松井市長は提言に対して、記者会見で高圧的な態度で応じた。また市会でも市政与党の維新議員が吊し上げるような質疑をおこなった。
そして校長は2021年9月、文書訓告処分となった。校長は翌2022年3月に定年退職したが、本人や支援者は処分の撤回を求め続けている。
それらの経過について、詳細にまとめた記事である。
詳細な経過については記事に譲るが、これまでの記事では触れられていなかった詳細な背景についても触れている。
処分の背景
校長の文書訓告処分の背景には、維新市政のもとで呼ばれた、大森不二雄大阪市特別顧問の存在があると指摘されている。
この人物は橋下市政のもとで大阪市教育委員を務め、委員の互選で教育委員長にも選出された。学校選択制の導入、教育委員会事務局が市立学校公募校長の行為を不適切だと判断して「処分やむなし」とした判断をひっくり返す、学力テストでの学校別平均点の公表など、橋下・維新市政での教育「改革」にもかかわっている。また2015年の中学校教科書採択問題で育鵬社の社会科歴史・公民教科書を採択し、その際不正や強引な対応があったとされることでも、重大な役割を果たしたとされている。
教科書採択問題が市会でも取り上げられ、共産党・公明党の市議のほか、自民党市議も「教科書の中身には立ち入らない」と前置きしながらも「採択の際に不正があってはいけない」という観点から批判的な質疑をおこなうなど、大きな問題となっていた。その間の2016年3月、「新年度より、本業の大学教員として新しい大学に赴任することが決まり、両立が難しくなった」として、教育委員の辞任を表明した。しかし、わずか半月後の2016年4月、吉村市政のもとで、教育分野を担当する大阪市特別顧問を委嘱されている。
大森特別顧問が、校長の処分に関与していたとする情報。記事によると、この人物が市教委の担当幹部に直接メールを送付して、校長の処分を働きかけていたと指摘している。
情報公開請求によって明らかになったメールの内容からは、大森特別顧問が主導した大阪市の教育振興基本計画が揺らぐことを恐れて、校長の提言の趣旨をねじ曲げて攻撃したとうかがわれると指摘されている。ほかにも、「リベラルアーツ教育」や「チャレンジテスト」について、市教委の当初の意向を、大森特別顧問がひっくり返させている痕跡があるとも指摘されている。
この指摘通りならば、行政の上意下達で教育の自主性を覆すような、とんでもないことだといえるだろう。
維新の教育介入が、最悪の形で現れているということにもなる。維新という勢力も問題ではあるが、それ以前に、現場や児童・生徒の実態を無視して、政治権力で教育に介入するというその行為それ自体が、極めて問題になる。