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文部科学省は2024年4月19日、教科書検定前の外部への流出疑惑などがもたれて、保留にあたる「未了」となっていた、令和書籍の中学校社会科歴史的分野の教科書2点を検定で合格にしたと公表した。
令和書籍とは
令和書籍は、作家・竹田恒泰氏が社長を務める。2017年に教科書に進出し、2018年検定以降過去4回の教科書検定では「不合格」になった経緯がある。2020年検定では、検定意見が極端に多かったとして、不合格が適用された。
同出版社側は「検定不合格教科書」と銘打って、一般書籍として販売していた。
過去に一般書籍として販売されてきた「検定不合格教科書」では、極端に復古的な記述が目立つという。
今回の検定に際しては、検定の際の外部流出疑惑については確認できなかったと結論づけた。そのうえで、検定意見が付いた箇所を修正した上で、検定に合格した。
同教科書では、以下のような内容が指摘されているという。
人類の誕生や旧石器時代の説明で始まる歴史教科書が多い中、令和書籍版の冒頭は、神々が日本列島を造ったとする「古事記」の日本神話を紹介。教育基本法が掲げる「個人の価値の尊重」を「ただの権利の享受ではなく、より正しい形で理解できるように」として戦前の「教育勅語」を取り上げたコラムを載せ、従軍慰安婦問題に関する韓国の対応を「蒸し返し」と表現した記述もあった。
毎日新聞web版・2024年4月19日『令和書籍の歴史教科書が合格 過去4回不合格、社長は竹田恒泰氏』
当方ではまだ当該教科書の本文にあたってチェックできていないものの、記事の内容を通じて、当該教科書の記述はなかなかにすさまじいものだということがうかがわれる。教育基本法と教育勅語を結びつけているとみられるコラムとは、嫌な予感しかしない。また従軍慰安婦に関する記述も妙なものではないかともうかがわれる。
検定で意見が付いた箇所は、以下のようなものとなっているという。
今回の検定では、国家や王朝の成立に関し「(国連加盟国中)現存する世界最古の国家は、我が国なのです」とした部分が「生徒にとって理解し難い」との指摘を受け「皇室は現存する『世界最古の王家』とも言われます」などに改められた。「後白河天皇の院政」を「後白河上皇の院政」に、「健保元年」を「建保元年」と修正した箇所もあった。
毎日新聞web版・2024年4月19日『令和書籍の歴史教科書が合格 過去4回不合格、社長は竹田恒泰氏』
後者2つは単なる誤字・誤記の可能性が高いとみられる。しかしながら、記事の最初に指摘されている、国家や王朝の成立の記述に際しては、すさまじい復古的な記述だと言わざるを得ない。さすがに意見が付いて修正を余儀なくされたとはいえども、問題点は十分に解決していない。
このことで、極右的・復古的な記述となった中学校教科書は、育鵬社、自由社と令和書籍の3社・4種類となった。
教科書採択に際して
その一方で前回2020年の教科書採択では、2010年代に極右教科書の代名詞のように扱われた育鵬社から他社に採択替えする傾向が、各地で進んだ。市民や教員らの運動もあったことが大きな要因でもある。その一方で、東京書籍や帝国書院などをはじめとした既存の大手教科書会社の記述が、一見すると無難な形にも見えるが、極右派にも無理なく受け入れられるように右傾化したと指摘されていることから、極右派にも「配慮」している側面があるという別の観点からの指摘もある。
現行では、育鵬社・自由社をあわせても、採択率は1%以下となっているという。そこに令和書籍が新規参入する形になる。
2024年夏に中学校教科書の採択替えがあることになる。生徒にとってわかりやすく理解できる、また授業担当教員にとっても教えやすい構成となっているような教科書が採択されることを願っている。