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横浜市教育委員会が、市立学校教職員の性犯罪事件の公判に市教委職員らを動員し、一般傍聴者を締め出していたことが、2024年5月21日にわかった。

対象となった事件は2019年度以降の4件で、いずれも市立学校教職員が加害者で、児童生徒が被害者の事件だったという。対象となった事件の加害者教職員は、4件中3件が懲戒免職となり、残る1件も実刑が確定して失職となった。

裁判の傍聴は一部注目事件を除いて先着順で決定し、立ち見などは認められていない。横浜市教育委員会はこのことを悪用し、法廷の傍聴者席の席数に応じて、傍聴席が埋まるように市教委が動員人数を決定し、動員文書を配布した。動員は通常業務の一環として実施され、市教委の学校教育事務所職員や人事担当部署の担当者などを中心に教職員が参加した。参加者には往復の交通費が支給された。

動員された教職員で傍聴席が埋まることで、一般の傍聴希望者が締め出される可能性が高まるということにもなる。

また動員文書では、動員の際、集団的な動員だとわからないようにするために「裁判所前での待ち合わせなどは避ける」「裁判所内では、顔見知りの教職員を見かけても、あいさつや声かけ・会釈などはあえて避ける」などの指示の注意書きもあったという。

新聞記者の違和感から裏付け取材

これらの経過が発覚したのは、事件取材のために裁判を傍聴しようとしていた、ある新聞記者の違和感だったとされる。

事件被害者は匿名の扱いになっていたのに、傍聴希望者が長蛇の列をなし、傍聴席が満席になっている事例が相次ぎ、自身が傍聴人として傍聴席に座れず取材断念を余儀なくされたこともあったことに違和感をもった。記者は、閉廷後に傍聴者に声をかけて取材を試みたという。しかし声をかけた傍聴者の態度はいずれも、学校・市教委関係者とも思われるが、取材を受けたくないという態度がありありだったことで、不信感を深めた。

取材を進めると、裁判が閉廷したあとに傍聴者の一人が、市教委の学校教育事務所の入る建物に入っていったところも目撃した。

これらのことから、記者は、傍聴者は市教委職員で、市教委の組織ぐるみでの傍聴妨害の可能性があるのではないかという疑いを抱き、職員の出張記録などの情報開示請求をおこなった。しかし市教委からは「開示請求は困難」だとする回答があったとされる。

事件の発覚

2024年5月上旬、外部から問い合わせがあって事態が発覚した。横浜市教育委員会は内部で対応を協議した上で、「今後は実施しない」と市教委内の関係部署に通知し、5月21日の発表に至った。

市教委はこのようなことをおこなった理由について、「被害児童・生徒のプライバシー保護」「被害者関係者からの要望があった」などと主張している。しかし訴訟事案については、被害者のプライバシーに配慮する必要がある場合は裁判所や検察庁がそのような措置をとることもあり、当事者関係者である市教委がそのような措置をおこなう理由に乏しい。また被害者関係者から要望があったとしても、市教委から裁判所や検察庁に要望するのが筋である。

このような措置をとることで、むしろ、裁判の公開審理などを妨害し、事実関係を隠蔽してしまうというデメリットのほうが大きくなる。市教委ぐるみで加害者をかばって事実隠蔽をしているとみなされてもやむを得ない。

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