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大阪府が計画を進めている、2025年大阪・関西万博の「無料招待事業」について、大阪府内の学校に参加意向を確認したところ、「未定・検討中」と回答した学校が多数あることが報じられている。
大阪府が各学校に示した意向調査の選択肢は「未定・検討中」ではあるが、マスコミが背景を詳しく取材すると、「難しい」とする回答が目立ったという。
会場の問題
無料招待事業は、学校行事などの形での学校からの引率を中心に検討されている。万博会場へは、延伸予定の大阪地下鉄中央線を利用するか、大阪市内のターミナル駅から発着するシャトルバスの利用か、大阪府が借り上げる貸切バスを利用するかの選択肢が想定されている。
しかしながら、学校現場からの引率は、いずれの選択肢でも厳しいと指摘されている。
貸切バスの利用については、バス駐車場予定地近くでのメタンガス発生の問題、地盤が弱く雨天時にはぬかるむ問題、バス駐車場から入り口まで長距離歩かせる問題、季節的に熱中症などが生じる可能性があるとされる問題などの懸念が指摘されている。大阪府には、日よけや道路舗装の状況、障がいを持つ児童生徒を移動させる車椅子などについて、懸念や質問が相次いでいるという。
さらにかねてからの運輸・輸送関係のいわゆる「2024年問題」で、バス運転手の数が不足し、バスが確保できない問題も指摘されている。
学校独自でバスを確保しようとしてバス会社に連絡を取ると、1人あたり5000円~6000円の見積もりを示され、公共交通機関利用と比べても大幅に経費がかさむ見通しになったという事例も報告されている。
希望するすべての学校で貸切バスが利用できるわけではなく、一定の割合で公共交通機関を利用することになる。鉄道利用の場合は、混雑する地下鉄での引率に難があることが指摘された。とりわけ小学校低学年の児童の場合、危険が伴うとも指摘されている。
交野市長の会見
山本景・交野市長は2024年5月24日に記者会見を開き、万博の無料招待事業については、必ずしも学校単位で連れて行かなくてもいいのではないかとする内容を公表した。
交野市内の小中学校の校長に意向を聴き取ったところ、参加希望の学校はなかったと指摘した。
大阪府が手配した貸切バスの数が全体で延べ約3000台・1日あたり10台前後と少なすぎて交野市に回ってくる可能性は薄いとみられることや、学校独自でバスを手配しようとすると高額になる見積もりを示されたことも指摘した。さらに、万博の期間は2025年4月13日~10月13日の半年間だが、学年の変わり目や猛暑の時期を避けると、5~6月に学校関係の来場者が集中する可能性が高く、混雑が激化するおそれがあることも指摘した。
これらを総合的に考え、市としては学校単位での引率ではなく、児童生徒が無料になる場合は家族と訪問する方がよいと判断したとする見解を示した。
雑感
万博の開催まで1年を切り、大阪府でも児童・生徒の無料招待の準備が進んでいる。しかしながら、万博そのものについても、それに伴う無料招待についても、深刻な課題が指摘されていることにもなる。
会場の安全性や、また会場での交通アクセスの問題、児童・生徒の負担などを考えると、少なくとも学校行事の形で、児童・生徒を無料招待するというのは、リスクがあり、懸念を感じるものとなってしまっている。このようなことでいいのかという印象を受ける。