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宮城県名取市立中学校に通っていた当時3年の男子生徒が2013年12月、学校でのいじめを訴えて自殺を図り、第三者調査委員会が設置されていたことがわかった。
生徒の保護者と代理人弁護士は2024年7月18日、第三者委員会の調査は適正におこなわれていないと訴え、調査のやり直しを求める要望書を名取市教育委員会に送付したことを明らかにした。
いじめ事案の経過
生徒は発達障害を持ち、特別支援学級に在籍していた。一方で普通学級でも授業を受けていた。普通学級では複数の同級生から「うざい」「くさい」「死ね」などの暴言を繰り返し受ける、わざと避けられるなどのいじめを受けていた。
生徒は担任教員に相談したものの「いじめはない」と扱われ、いじめが改善することはなかった。
生徒は2023年12月、「もう何もかも嫌になった、つらい、生きたくない」「死にたいという毎日をずっと繰り返していました」など記した遺書を残し、校舎3階から飛び降りた。生徒は一命を取り留めたが、左腕骨折などの重傷を負った。
名取市教育委員会はいじめ「重大事態」と判断し、2024年1月に第三者委員会を立ち上げて調査を開始した。
しかし生徒や保護者に対して直接の聴き取りがないこと、第三者委員会のメンバーに退職校長が入っていることなどで、「公正な調査がおこなわれないのではないか」として保護者が第三者委員会の調査手法に不信感を抱いた。
保護者は名取市教育委員会に対し、委員の交代と調査委員会での調査のやり直しを求める要望を郵送でおこなった。2024年7月18日に記者会見をおこない、一連の事実関係を公表した。
保護者によると、生徒は「いじめがある中で勉強したくなかった。特別支援学級で勉強したかった」などとしているという。
一方で名取市教育委員会は、生徒に事情を聴かなかったのは「生徒の心情に配慮したから」だとし、「報告書ができてから連絡しようと考えていた」などとしたという。調査委員会はすでに複数回実施しているが、委員については「外部非公表」の扱いにしているという。
雑感
生徒が自殺を図るほどの深刻ないじめだったということは、話を聴くだけでも辛い。
問題となったいじめについても、生徒が被害を訴えているのに、「いじめはない」という対応を取った学校側の対応はどうだったのかという点について、詳細を明らかにするキーワードになるであろうとも感じられる。
また特別支援学級在籍の生徒の学習権と、障がいを持つ生徒がほかの生徒と障がいの有無にかかわらず共に学ぶことを図るインクルーシブ教育との関係という視点についても、ひとつのポイントになるとは感じる。
インクルーシブ教育は、一般的な観点としていえば、それ自体を否定するものではないし、否定してはいけないというのは前提ではある。
一方で個別の生徒に合った対応というのは、個別対応・オーダーメイドということにもなる。個別の対応をせずに、インクルーシブの理念の都合のいいところだけをつまみ取りして、結果的に障害のある生徒を機械的に普通学級に放り込む形になってしまうのならば、逆に具合が悪いということにもなってしまう。いじめなどの好ましくないことが起きても放置したり、またこれはいじめとは別個の課題ではあるが、学びの保障という観点でも支障が出るような状況になってしまうという状況に陥ってしまうということも、理論的には考えられることになる。
もっともこの事案は報道の範囲でしかわからないので、ここでのインクルーシブについてはあくまでも一般論として普遍化した話ではあり、当該校の具体的な状況については踏み込めない。とはいえども、特別支援学級とインクルーシブとの関係についても、考えてしまう。