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横浜市の市民団体「横浜学校給食をよくする会」は2024年7月19日、市立中学校で実施されている選択制デリバリー給食について、相次ぐ異物混入事案に対する原因究明や再発防止策の徹底、提供方式の再検討などを求める申し入れをおこなった。
経過
横浜市では、1970年代の人口の急激な膨張により、既存校の過密化対策としての分離新設校の設置に重点がおかれ、中学校給食の実施までに手が回らなかった背景がある。そのため中学校給食は長い間未実施になっていた。
2016年度には家庭弁当との選択方式で、中学生向けに「ハマ弁」と呼ばれる市独自のデリバリー弁当が導入されたが、それはあくまでも弁当を持参できない事情がある生徒・家庭への代替手段で、学校給食とは位置づけられていなかった。
そして2021年度には、「ハマ弁」を発展的に解消する形で、選択制デリバリー方式の中学校給食を導入した。
2021年8月には山中竹春横浜市長が就任した。山中市長は選挙時の重点公約のひとつとして、全員喫食制の中学校給食導入を掲げた。
その一方で、具体的な実施手法の検討については紆余曲折があった。全員喫食制での中学校給食の実施を求める保護者らは、自校調理方式が最適解だとして求めていた。
一方で山中市長は横浜市の担当部署との検討の上で、「自校調理方式では、調理設備の設置の見通しが立たない。30年以上かかると試算した」「給食センター方式でも、用地などがないし、実現までに10年以上かかる」などとした。そして、早期実現が可能で費用も安く済むとして、デリバリー給食方式を全員喫食制に移行することが最適解だと結論づけた。2026年度にも全員喫食制に移行する方針だとしている。
そのことで、全員喫食制の中学校給食実施を求める保護者や市民からは、不安と失望が広がっているともされる。
現状では、選択制デリバリー方式での提供となっている。
しかし選択制デリバリー方式では、提供方式に強い不安が持たれている。異物混入事案が相次いでいる。
2023年度には、粉ふきいもの調理中に、鍋の中からタバコの吸い殻が見つかった。2024年度には、米飯への脱酸素剤の混入事案があり、さらにその直後には、肉じゃがの材料だったジャガイモから異臭があったとして、メニューを急遽変更して「ジャガイモ抜きの肉じゃが」を提供した状況もあった。
異物混入事案については、横浜市教育委員会の事実関係調査や情報開示に問題があったとも指摘されている。
申し入れをおこなった団体は、マニュアルの徹底が不十分な中で異物混入が起きた」として、抗議の意向を示した。また横浜市教育委員会が、「生徒への提供は防いだ」「健康被害は確認されていない」などとして、情報開示に消極的な姿勢を取ったことも批判している。
雑感
市民団体からの不安はもっともなものであると感じる。
全員喫食制の学校給食の導入や充実がいわれているもと、全員喫食制のデリバリー弁当方式を選択した横浜市のあり方は、残念だと言わざるを得ない。
デリバリー弁当方式を全員喫食制にして混乱を招いた事例として、大阪市と神奈川県大磯町の事例が、かつて大きく報道された。
大阪市の事例では、デリバリー弁当方式の選択制給食で選択率が低迷したからといって、当時の橋下徹大阪市長が2014年度に全員喫食制に切り替えたことで、生徒からは不評だったり、異物混入事案も相次いだりして混乱を生んだ。最終的には、自校調理方式と、近隣の小学校で調理した給食を中学校に運搬する「親子給食方式」を併用する、学校調理方式での給食に切り替えた。学校調理方式への移行は順次実施され、2019年2学期に全校での移行が完了した。
大磯町の事例では、一度デリバリー給食を導入したが、生徒からは不評で残食率が相当数にのぼったことや、異物混入事案などもあったことで、2017年10月に全員喫食制デリバリー給食を撤回して休止扱いとし、当面は家庭弁当と業者弁当の選択制での併用とした上で、将来的には自校方式で中学校給食を再開する方向性を決めた。
横浜市でも似たようなことが生じてしまうのではないかと不安になる。デリバリー弁当方式に固執するのは、得策ではないように感じる。
また異物混入が相次いでいることも気になる。事故を防ぐ対策や、万が一発生してしまった場合の速やかな情報提供・原因究明なども求められている。