東京都渋谷区立中学校の給食について市民団体が渋谷区教育委員会に情報公開を求めたところ、「文書を開示した場合、ブログやメディアで『中傷』される恐れがある」として教育委員会が非開示決定をおこなっていたことがわかりました。


 毎日新聞2010年12月28日付『東京・渋谷区教委:給食費情報、「中傷」恐れ非公開決定--ブログ運営、市民に』が報じています。
 記事によると、経緯を以下のように報じています。
 請求したのは「渋谷オンブズマン」の堀切稔仁事務局長(42)。堀切氏によると同オンブズマンは、区立中学1校の給食に関し、「給食費に比べて食材が粗末だ」などとして、会計に不透明な点があるとみて調査を進めている。この問題に関する会合があったとみられる、昨年9~12月の区教委職員、全区立中校長・副校長らの「旅行命令簿」など出張の記録を9月8日に情報公開請求したが、今月16日にすべて非公開との決定が出た。
 区教委の通知書は、「請求人所属団体のブログは、保護者、教職員など関係者の個人名を挙げて、誹謗(ひぼう)中傷する記事及びコメントが掲載されている」などと指摘。公開請求の権利乱用を戒め、得た情報の適正使用を定めた区情報公開条例に違反するとして、非公開にしたと説明している。
 さらに、「一部メディア」に同様の記事が掲載され、学校現場が混乱し、「正常な学校運営に支障を及ぼす」ことなども理由に挙げている。
 同オンブズマンのブログには、保護者や卒業生と学校側のやり取りが校長、教諭らの実名を挙げて記載されている。また、この経緯を週刊誌「週刊金曜日」が記事にした。
(毎日新聞2010/12/28『東京・渋谷区教委:給食費情報、「中傷」恐れ非公開決定--ブログ運営、市民に』)

 問題の団体のサイトを読んでみましたが、公共の利害に関わる穏当な内容しか書いておらず、「誹謗中傷」などに該当するような内容は見あたりませんでした。
 ブログでは確かに個人名をあげていますが、個人名をあげることが必ずしも誹謗中傷になるというわけではありません。逆に、公務員である公立学校教職員や区教委職員については、公共の利害に関する事実である限り、実名表記や事実の摘示は「誹謗中傷」や名誉毀損には該当しないことは明らかです。
 もちろん、例えば事件被害者などの場合は実名を伏せた方がよい場合もありますが、今回の場合は不正疑惑でもあり、実名を伏せる理由もないでしょう。
 「一部メディア」に記事が掲載されて「正常な学校運営に支障を及ぼす」など噴飯ものでしょう。社会的に知られてはまずいことをしているという自覚があることを告白していると受け取ってよいのでしょうか。
 他者の個人情報に関わる内容など、開示が不適切なものは確かにあります。しかし学校給食に関する会計状況などについては、公共的な性格を持つものであり、開示が不適切という理由など全くありません。
 また「自分にとって不都合」ということと「誹謗中傷」ということは、全く性格の異なる問題です。この問題に限らず、学校・教育委員会は「自分にとって不都合」だから「誹謗中傷」という屁理屈を振りかざすことがよくありますが、そういうことは成り立ちません。
 区教委の態度は結局、自分たちにとって不都合な事実を隠し、不都合な事実を指摘するものを敵視して批判を封じ込めようとするものであるといわざるを得ないでしょう。
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集