勤務校の複数の女子生徒に性的行為を加えたとして逮捕・起訴された佐賀県立高校教諭(50代)の公判で、被告氏名を匿名にして審理することが決まったと報じられています。


 佐賀地検が「被害者特定を避ける」として、被害者の氏名だけでなく、勤務校(事件のあった学校)・発生年・被告教諭の氏名を匿名にするよう申し入れました。佐賀地裁も申し入れを受け入れたということです。
 この事件では、逮捕の際にも「佐賀県立高校の50代教諭が逮捕された」という事実関係のみを公表し、教諭の氏名や被疑事実の詳細は伏せて発表されています。
 被害者の氏名を匿名にし、また被害者の個人情報特定につながる内容を伏せるのは当然です。しかし勤務校や発生年・被告氏名を公表したところで、被害者の特定にはつながりません。被告氏名や勤務校などの公表で被害者を特定できるのは、被告側に近い人物くらいでしょう。関係者以外の一般の人には、被告氏名や勤務校などの情報だけで被害者を特定するなど到底不可能です。
 とりわけ、教諭の立場を利用して犯行に及んだことが疑われる事件であり、一種の権力犯罪疑惑でもあり客観的な検証が必要とされるという意味でも、被害者の個人情報を除く内容は可能な限り公表すべきではないでしょうか。
 裁判所の措置は、「教師の犯罪疑惑だから一般人よりも甘く扱い、被害者保護の名目で実際は被告教諭に有利にしたのではないか」と疑います。
 被告側は無実を主張しているといいます。裁判所の措置については、「無罪主張するうえで具体的な事実を隠して公判を進めるのは非常に難しい。質問や答えの認識に食い違いが生じる恐れがあり、正確な審理、被告の防御のために不適当」として、被告の弁護士側も反発しているといいます。
 教諭氏名を匿名にする措置については、当方の推測と被告側の主張とはかなり理由が異なりますが、結果的に「匿名はおかしい」という結論だけは被告側と一致するというのも不思議なものです。
(参考)
◎佐賀地裁:被告教諭、公判で匿名決定 女子高生に性的行為(毎日新聞 2011/1/27)
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