京都大学などの入学試験中にインターネットの質問サイトに「答えを教えて下さい」という趣旨とともに問題が書き込まれた事件で、事件に関与したとされる受験生は3月5日に偽計業務妨害容疑で京都地検に書類送検されました。


 また、同様に試験中にサイトに試験問題が投稿されたとされる早稲田大学は内部調査の結果、「サイトに寄せられた回答と酷似する答案を書いた受験生がいたことが発覚した」として、受験生1人の受験結果をすべて無効としたと発表しました。早稲田大学はこの受験生について、京都大学の件に関与したとされる受験生と同一人物かどうかは確認していないとしながら、状況からはこの受験生と同一人物の可能性が高いとみられます。
 具体的な投稿方法も少しずつ明らかになってきました。受験生は試験時間中、携帯電話を股の間に隠しながら左手でメールを打ち、右手で鉛筆を持って答案を書いていたといいます。携帯電話は通常のもので、特殊な機能はついていなかったということです。
 事件発覚当初は「試験開始から数分では携帯電話に問題を打ち込めないだろう」として、文字読みとり機能の使用、隠しカメラなどで問題文を撮影して外部協力者に送信して外部協力者経由でのネット投稿など、大がかりな手口を使った可能性も疑われましたが、結局はカンニングペーパーをこっそりと見るような古典的手口の派生系だったことになります。
 ただ、事件発覚当初はこの事実がわからなかったことに加えて、複数の大学にまたがった問題になったこと、ネットを使用したことなどから、大がかりな不正組織が存在する可能性も視野に入れて動かなければならなかったという事情もあり、各大学の独自調査ではどうしようもない部分が出る可能性もあったので、警察が動くような問題になってしまった側面もあるでしょう。刑事事件としては一通り捜査した後起訴猶予処分にし、後は各大学の判断に任せる可能性が高いでしょう。
 問題の受験生が話したようなことは実際にできるのでしょうか。捜査当局は本人立ち会いの下で再現実験をおこなうとしています。その一方で『京都新聞』が独自に再現実験をおこない、検証記事『顔、ひじ不動で素早い入力 大学生ら手口再現』(2011年3月5日)を掲載しています。
 『京都新聞』では、受験生とも年齢が近い大学1回生5人を集め、ネット上に投稿された京都大学の問題を受験生と同じ方法で入力してもらったといいます。受験生が試験開始から7分半後にネットにアップしたという英訳問題は、4分43秒~8分59秒で打ち込みが完了したといいます。また開始7分後に投稿された数学の問題についても、4分7秒~5分57秒で入力完了しています。
 打ち込みの際の姿勢についても、かなり近寄らないと携帯電話や不自然な姿勢に気づかないという状況だったということです。
 今回はたまたまネット掲示板を使ったから発覚しましたが、仮に「外部協力者にこっそりとメールを送信して答えを得る」という手口ならばばれなかった可能性もあるということになります。
 今回の事件を教訓に、大学として可能な対策を考えていくことが課題になってくるでしょう。
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