福岡県北九州市小倉北区にあった無認可保育所「中井保育園」(廃園)で2007年、園児の男児(当時2歳)が園外保育からの帰りに送迎車内に置き去りにされ熱中症で死亡した事故がありました。
 この事故で、両親が当時の園長ら職員7人・園の運営会社・北九州市を相手取って約5842万円の損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁小倉支部は4月12日、両親の訴えを一部認め、元園長と職員4人・運営会社に計約5千万円の支払いを命じる判決を出しました。


 事故は2007年7月27日に発生しました。この日は園外保育がおこなわれ、昼過ぎに送迎車で園に帰りました。引率の保育士は人数確認などを怠り、この園児を車内に取り残したまま車を駐車場に駐車しました。夕方になって初めてこの園児がいないことに気づきました。放置から約4時間後に発見されたときには児童は熱中症を発症していて、その後死亡が確認されました。
 中井保育園は事故をきっかけに閉園しました。
 この事件では、送迎車での引率を担当した保育士2人に執行猶予つきの有罪判決、また別の保育士2人にも罰金の略式判決が確定しました。園長も書類送検されましたが、嫌疑不十分として起訴猶予処分となりました。
 原告側は「有罪判決が確定した4人以外の職員にも過失責任がある。北九州市は年1回の立入調査を漠然としかおこなわなかった」と主張しました。
 判決では、事故当日の安全確認の不備を認め、園長と保育士4人の計5職員、および運営会社に対して損害賠償を命じています。賠償を命じられた保育士4人は、すべて有罪判決が確定した保育士だということです。一方でほかの職員2人への請求は認めず、また立入調査は適切におこなわれたとして北九州市への請求は棄却しました。
 両親側の主張は一部棄却されていますが、主要な部分についてはおおむね認められたとみてもよいのではないでしょうか。
 一方でこの事件は、関係者がきちんと確認していれば未然に防げた事件です。このような悲しい事件が再び起こらないよう、全国の保育所や幼稚園の関係者はこの事件を対岸の火事とせず、教訓を導き出し安全対策を徹底していくことが強く求められます。
(参考)
◎熱射病死 園に五千万円賠償命令 地裁小倉 市の責任認めず(西日本新聞 2011/4/12)
◎元園長らに賠償命じる、北九州の園児熱射病死訴訟(読売新聞 2011/4/12)
◎熱射病:送迎車内で園児死亡、元園長らに賠償命令 北九州(毎日新聞 2011/4/12)
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集