愛媛県の一部地域で「つくる会」などの教科書が採択されたことを受け、愛媛県内の市民団体が採択の取り消しや右派教科書2社の採択除外などを求めた訴訟で、松山地裁は7月13日、原告側請求を棄却しました。




 判決では「教科書の採択が適正にされるのは公益であり、採択によって自己の権利や法律上保護された利益を侵害される恐れはない」などとして、原告には採択取り消しに関する原告適格は認められないと結論づけました。


 しかし「教科書の採択が適正にされるのは公益」というのならば、不適切な教科書の採択によって教育権を侵害することになります。しかし判決では、公益のはずの採択による結果を個人の利害に矮小化する結果となっています。


 愛媛県では前回採択で、扶桑社教科書が県立学校(歴史)や今治市越智郡採択区(歴史・公民)で採択されてしまっています。このほか松山市でも前回は採択の危機にあるといわれましたが、かろうじて回避した経過があります。


 扶桑社(今回は子会社の育鵬社から発行)にしても、自由社にしても、一方的で不適切な記述が多くみられます。



  • 史実と神話を混同させるような表現:一般には「仁徳天皇陵」として知られる大仙古墳についての説明など

  • 侵略戦争肯定:日露戦争の美化、「大東亜戦争」の美化、昭和天皇の美化など

  • 日本国憲法の成立過程を「押しつけ憲法論」としてゆがめて描く

  • 日本国憲法の説明で、国民主権の記述はそこそこに、天皇について長々と記述

  • 原子力発電の一方的美化、原発の問題点には触れない


 上記で触れた内容のほかにも、問題点が指摘されています。


 愛媛県では今回の採択でも、右派教科書2社が採択される危険性が高いといえます。今回の判決で右派教科書支持側が勢いづく可能性もありますが、このような教科書は決して採択させてはならないという世論を広げなければなりません。


(参考)

◎教科書問題:採択取り消し訴訟 「原告適格なし」請求棄却--松山地裁 /愛媛(毎日新聞 2011/7/14)


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