鹿児島県出水市立中学校の女子生徒が2011年9月、九州新幹線に飛び込み自殺した事件。いじめをうかがわせる証言があがっているものの、学校や教育委員会は同級生に実施した調査結果の開示を拒んでいる。


 遺族側は独自調査をおこない、いじめがあったとする具体的な内容の証言を複数得ているという。一方で出水市教委は、学校・市教委の調査でも、遺族側の調査で得られた証言と同趣旨の内容が記載されていたことを示唆しているが、「断片的な情報や憶測・伝聞情報が含まれている」などとして、二次被害を防ぐためと主張し、非開示としている。また非開示は、文部科学省の方針に沿ったものだとしている。
 出水市教委の対応、似たようなことをどこかで見たような既視感がある。不適切対応が発覚して社会問題化した滋賀県大津市立皇子山中学校いじめ自殺事件での、大津市教委の言い分とそっくりである。
 大津の事件でも、具体的ないじめの証言が複数寄せられたにもかかわらず、「抽象的・断片的・伝聞情報」などと切り捨て、詳細を隠していたことが2012年7月に新聞報道で発覚したことが、問題化のきっかけだった。その後問題の高まりを受け、調査結果が大津市議会資料として市議に配布され、また傍聴者やマスコミ向けにも同じ資料が配布・一般公表されたが、中身は「抽象的・断片的」とはほど遠い、具体的で生々しい内容だった。
 出水市の事件は、事件そのものは大津市の事件よりも約1ヶ月ほど早く発生しているが、同時期といっていい事件である。滋賀と鹿児島、遠く離れた地域ではあるが、まるで示し合わせたかのように、同時期にほぼ同じような学校・教育委員会の対応がなされていたことになる。
 いじめを隠しておかなければ不都合、具体的な証言があっても「断片的・抽象的・伝聞情報」に無理やり結論付けるというのは、担当者の個人的資質ではなく、制度上の問題ととらえなければ説明がつかないのではないか。
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