橋下徹大阪市長は1月5日、ツイッター上で教育・学問分野にとっては見逃せない発言をさらりと書き込んでいる。


 一つ目は学校選択制の問題。ツイッターユーザーの意見に反応する形で、学校選択制を2014年度からスタートさせると断言している。

 しかしこの発言は、これまでの経緯を無視したものである。
 学校選択制については、学校の特色よりも風評や交通の便などの表面的な要素に左右され、人気校と不人気校の格差が出る。人気校では過密化によって、教室不足のために特別教室を普通教室に転用するなど教育条件低下が起きる事例があった。一方で不人気校では生徒数に対応して教職員も減らされ、全教科の教員がそろわずに臨時免許で専門外の教科も教えざるを得なくなる、部活動も指導教員不足で十分に開設できない、そういった条件が敬遠されてさらに不人気・生徒減少に拍車をかける悪循環に陥ったという事例も報告されている。
 それらの弊害が目立つとして、一度導入した学校選択制を中止したり大幅に縮小するなどの対応をする自治体も増えている。
 一方で大阪市では、橋下徹大阪市長や市長与党の大阪維新の会が学校選択制導入に執着している。
 大阪市では橋下市長の意を受け、24区各行政区ごとに最低1回ずつ(区によっては複数回開催)学校選択制導入の是非を検討するシンポジウムを開催した。会場からの意見や、会場で回収されたアンケートでは、学校選択制に反対する、もしくは懸念を示す意見も多く寄せられ、反対が6割以上にのぼっている。また賛成とする意見についても、橋下・維新が推進するような自由競争での学校選択を支持する意見はほとんどなく、「自宅と学校との距離や位置関係」「引っ越した場合の柔軟対応」「いじめ」など現行の指定校就学変更制度を柔軟に適用すれば十分に対応可能なものとなっている。
 また市の検討会議でも、シンポジウムの結果を踏まえて慎重意見を併記する報告書をまとめている。橋下発言は、これらの経緯を一切無視するものである。そもそも、シンポジウムやアンケート、市の報告書での多くの住民の意見は無視して、ツイッターに投稿された一つの賛成意見だけを採用すること自体が、怪しいこと極まりない。
 また大阪市は「各区ごとに、区長が導入の是非を判断する」という見解を示しているが、それすら一方的にひっくり返すものである。
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