2014年度に使用する高校教科書採択をめぐり、実教出版の高校日本史教科書を一部の教育委員会や議員が敵視し、同社教科書を採択させないようにする圧力をかける動きが強まった。東京都で学校現場に圧力がかかった過程について、都立高校教員が東京新聞の取材に答えている様子が、東京新聞2013年9月18日夕刊の記事でまとめられている。


 『実教出版教科書を希望…やはりダメ 現場の教員「息苦しい」』によると、以下のようになっている。
 「来年度は実教の教科書を使いたいのですが」。七月上旬にある都立高校で、日本史担当の教員ら数人が、急きょ校長に申し入れた。
 数日前には都教委が、実教出版の教科書について「使用は適切でない」とする見解を各校に示したばかり。問題視されたのは、国旗掲揚や国歌斉唱をめぐる「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」としたわずかな記述だった。
 これまでは各科目の教員が選んだ教科書が、校内の教科書選定委員会を経て都教委で採択され、そのまま使用されることが通例だったという。
 この高校でも、教員らが来年度の日本史教科書を選ぶ中で「生徒に主体的に考えさせる内容で、使いやすい」との判断や、現在も別の実教版教科書を使っていること、学力レベルに合うことから、実教版を希望していた。
 しかし、突然の都教委の見解により、教員らが望んでいた実教版教科書の使用は難しくなった。
 危機感を抱いた教員らに校長は「都教委の見解をほごにはできない」と伝えた。
 校長から再考を求められた教員らは悩んだ末、第二希望として別の教科書を、校内の選定委に挙げた。選定委では第二希望だけが検討され、使用教科書として都教委に報告された。
 男性教員は「教科書選びは、生徒の関心を高めるための教員の工夫の見せどころ。授業にまで介入されたようで、息苦しい」と経緯を振り返った。
 これに対し都教委の担当者は、「そうした動きは把握していない。教科書の採択権は都教委にある。各学校の校長が通知を踏まえ、教科書を選んだ」としている。

 都教委が圧力をかけ、現場の意向を一方的にひっくり返していった過程が浮き彫りになる。政治的な思惑のために、学校現場の意向が左右されるという恐ろしさと息苦しさを感じる。
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