沖縄県八重山地区教科書採択問題について、下村博文文部科学大臣は3月14日、竹富町教育委員会に対し、育鵬社版の中学校社会科公民的分野教科書を使用するよう是正要求をおこなった。

 この問題では、竹富町など3自治体で構成する八重山地区教科書協議会が、「つくる会」支持派の協議会会長を主導に、委員の入れ替えなども強引に図って、現場からは希望があがらす採択候補としても名前があがっていなかった育鵬社版中学校社会科公民的分野の教科書を採択するよう答申をおこなった。

 しかし竹富町は手続きを問題視し、現場からの希望が強く協議会でも採択候補とされていた東京書籍版を採択することとした。地方教育行政法では教科書採択権限は自治体教委にあるとしているものの、その一方で教科書無償措置法では、同一採択地区内では同一教科書を使うという別の規定もあり、法的には矛盾する状態となった。

 採択地区内の関係自治体は採択委員の全員協議会を開き、東京書籍版の採択を認めた。しかし「つくる会」支持派や文部科学省は全員協議会の決定を無効とし、他の教委では育鵬社版を引き続き採択した。

 沖縄県教委は状況の打開を図るため、採択地区の分割などを提案した。しかし採択地区分割は文部科学省が拒否し、文科省はあくまでも竹富町を一方的に「違法」と認定して育鵬社教科書を採択させることにこだわり続けている。

 政府は当初、沖縄県を通じて是正要求をおこなうことにしていた。しかし県が態度を保留したため、国が直接町に是正要求をおこなう形になった。

 経過をみれば、竹富町教委の判断は正当なものだといえる。問題の元凶は教科書採択協議会の強引な運営にあり、またそれを追認する文部科学省も混乱に輪をかけている。

 育鵬社版は中身も重大な問題があり、また支持派の強引な態度も問題視されている。現場の判断を重視せず、現場が望んでいない教科書を押し付けるようなことは、あってはならないことである。

(参考)
◎採択教科書拒否:文科相が竹富町に是正要求 市区町村で初(毎日新聞 2014/3/14)
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