安倍内閣は学校教育法と国立大学法人法の改定案を国会提出した。この法案は教授会の権限を強化し、大学自治を後退させる危険性があるとされるものである。この法案について、『しんぶん赤旗』2014年5月8日付が詳細な解説記事『2014 とくほう・特報 安倍流の「大学改革」 学問の自由あぶない!』を出している。

 大学自治については、中世西洋の大学の形成過程が「学びたい人が自主的に運営する」という過程だったことで、学問的真理が最大の判断基準で、権力や財力などの外圧で学問的真理がゆがめられてはならないという観点から、大学に関することは大学の構成員が自主的に決めるという大学自治の原則が形成されてきた。

 時代が下り近代国家が大学を形成するようになっても、大学自治の原則は世界的に受け継がれたものである。

 日本においては近代国家が大学を形成したものの、海外の流れを受け継いで大学自治の原則が確立されてきた。記事では、現行の日本国憲法第23条で「学問の自由は、これを保障する」、学校教育法第93条で「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と、法的にも具体化化されていることを示している。

 安倍政権は学校教育法93条の条項を改変し、教授会を大学運営の審議機関から、学長の諮問機関へと変更する方針を決めた。審議機関と諮問機関では言葉だけは似ているようでも、実際の中身は大きく違い、学長やその側近の大学執行部の意向が強く反映されることになる。

 また国立大学法人法の改定案では、学長選考会議が学長選考基準を決めるとしている。このため、学長選挙をおこなってもその結果が反映されなかったり、学長選挙自体を中止する事例が増加するのではないかと危惧されている。

 これらのことは、学長のトップダウン体制を招き、国の政策に批判的な研究をしているとみなされた教員が恣意的に排除されるなどの事態を招きかねないと危惧されている。

 戦前には、当時の民法について女性のみに姦通罪を定めていたのはおかしいと主張した法学者が国の圧力で排除される、京大滝川事件が起きた。このような状況の再現すら危惧される。これは大学自治の破壊であり、極めて危険な動きである。
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集