大阪市教委が市立学校で「ゼロ・トレランス」方式を導入する検討を始めたと報じられている。

 橋下徹大阪市長が提案し、大森不二雄教育委員長も前向きに検討しているという。2015年度にも予算化して導入したいとしている。

 ゼロ・トレランスについては1997年にアメリカのクリントン大統領が提案し、米国で具体化された手法である。児童・生徒の問題行動を基準化し、「違反」には減点方式などで厳格に運用して罰などを課すことで、学校の規律を守るものとしている。

 日本でも2005年頃よりこの考え方が輸入され、一部の学校で具体化された。しかし「服装違反や頭髪違反には警告カードを発行し、一定数貯まると保護者を呼び出す」「髪を染めた生徒は学校に入れない」「校則違反には草むしりの罰や反省文」「携帯プレーヤーやピアスなどを持ち込むと卒業まで学校で没収」などの管理的手法であり、異論も多い。

 一世代前の日本では管理教育と呼ばれて問題になっていたものを、米国式の手法を取り入れながら現代的に再現していると言ってもいいだろう。

 大阪市でこんな時代遅れの手法を導入する根拠として、大阪の学校での校内暴力の増加があるという。校内暴力はもちろん肯定するわけにはいかないが、個別の事情ごとに暴力の理由や背景などを究明して根本的な対策が必要になる。隔離や厳罰を背景に児童・生徒を脅して覆い隠すだけでは、余計に陰湿になる恐れもある。

 また大阪市では、問題行動を繰り返す児童を集めた特別校の設置や、出席停止の厳格化なども検討しているという。当面は非行の多い「教育困難校」をモデル校として、試験的に導入するとしている。

 特別校に放り込んだり、「教育困難校」を行政公認で目に見える形で指定することで、そこに通う児童・生徒にさらに劣等感を与えて問題行動の引き金になりかねない。出席停止についても、いじめ被害者を守るためにやむを得ない最小限の措置などならともかく、これでは見せしめ的に罰を科すという側面が強くなる。

 これらの構想は、とんでもない発想だといわざるをえない。

 また規律やルールなどを振り回すのがお好きな人たちが、自らの態度はめちゃくちゃというのも、何の嫌がらせなのだろうか。大阪市会本会議では5月14日、ある会派の代表質問に対して橋下徹大阪市長は答弁で、質問の趣旨とは全く関係ないにも関わらず「その会派の中に一人だけ態度の悪い若造議員がいる」などと突然攻撃し、議事が一時中断する異常事態となった。子どもに規律を強要する前に、自らの態度を省みたらどうか。

(参考)
◎大阪市立校:「問題行動に即罰則」検討 暴力急増背景に(毎日新聞 2014/5/18)
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