中日新聞(滋賀版・web)2014年7月1日付に、『遺族が署名活動愛荘・柔道死亡事故』の記事が掲載されている。

滋賀県愛荘町立秦荘中学校で2009年、柔道部員だった当時1年の男子生徒が練習中、当時の顧問講師から過酷な練習メニューを課され、「乱取り」で投げ技を返されるなどして意識不明になり、その後死亡した事故があった。

この事件の民事訴訟では、講師の過失を認定しながらも、国家賠償法の規定により個人の責任は負わないとして、一審大津地裁・二審大阪高裁ともに講師個人の賠償責任を認めなかった。

記事によると、遺族側はこのことを不服として最高裁に上告し、審理中だということである。遺族は、公務員というだけで個人責任が免責されるのは不当で、同じことが繰り返される恐れがあるとして、署名を集めて最高裁に提出することを計画しているという。2014年7月下旬の提出を予定している。

国家賠償法では公務員個人の責任を負わせないとしているのは事実である。しかしそれは、業務命令に従ったために生まれた被害や、不可抗力による被害などを想定しているのではないか。

学校での事故は、一般的に言えば、学校関係者の特定の誰かの個人責任になじまない性格のものも多いだろう。そういう場合には、国家賠償法の規定で個人責任は免責されてもおかしくない。

しかし秦荘中学校事件の経過は、明らかに故意によるものであり、暴力行為と言っても差し支えないレベルの悪質な行為である。柔道初心者に対して無理な練習を指示した問題、しかも「死亡した生徒がフラフラになっているにもかかわらず顧問が投げ飛ばした」などしごきレベルの「指導」など、明らかに職務から逸脱した行為であり、国家賠償法の規定で守るのにはなじまないのではないか。

もっとも、故意や重大な過失がある場合には、行政側が当該者に対して、被害者に支払った賠償金の全部ないしは一部を求償することはできる。しかしそれは行政側の任意であり、被害者側の意向には左右されない。

教師がらみの事件事故だと、当該者は何食わぬ顔して生活し、場合によっては「おかしな人間に粘着されて、またマスコミから報道被害を受けて、犯罪者呼ばわりされて陥れられた被害者」かのように振る舞って事件被害者を攻撃・中傷する図々しい輩までいる。これでは被害者は救われない。

今までの国家賠償法の法的解釈を越えるような、画期的な判断が下ることを願う。
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