『朝日新聞』神奈川版2014年7月10日付『教科書採択 管理職が介入』。神奈川県立高校での教科書採択について、実教出版の日本史教科書を採択させないよう圧力がかかっていることがリポートされている。

 実教出版の日本史教科書は、国旗国歌法について「政府は、この法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし、一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述がある。

 そのことが気に入らないとした一部の教育委員会が各高校に圧力をかけ、社会科教員が一度採択を内定した同教科書の採択を取り消させ、他社の教科書に変更させる例が、2012年度以降に相次いだ。東京都や神奈川県などでそのような事例が報告されている。また埼玉県や大阪府では、右派の議員(埼玉県では自民党系、大阪府では大阪維新の会)が教育委員会に圧力をかけて採択阻止を図る事例もあった。

 2014年になっても、神奈川県では実教出版の採択妨害の動きが続いているという。記事では、以下の様子が記されている。
 横浜市内のある県立高校。関係者によると、社会科の教諭が手にした教科書目録には、実教出版の日本史の欄に「×」と書いてあった。管理職に説明を求めたところ、「自分の判断でやった」と認めた。この管理職は教諭らに、「実教出版を選んでも、また差し戻しになって混乱すると考えた」と説明したという。

 別の県立高校では、社会科教諭同士の話し合いでいったん実教出版を選ぶと決めた。だが、校長に提出したところ、「変えてくれ」と求められた。理由を尋ねると、「総合的に判断した」の一点張り。この高校の他の管理職は「県教委に昨年の経緯をふまえて選んでほしいと言われた」と明かしたという。ある教諭は「県教委の圧力で、実際に授業をしている教諭の判断が覆されている」と憤る。

 神奈川県教育委員会が圧力をかけ、現場教員の判断を覆してまで実教出版教科書の採択を妨害している状況が、浮き彫りになっている。

 神奈川県教委や他の地域の一部教育委員会が問題視している教科書の記述は、客観的事実を記しているだけで、特に問題のないものである。日の丸・君が代を強制しようとする動きが特に激しい自治体の教育委員会ほど、身に覚えがあるから都合が悪いという自覚でもあるのかというような態度で、この教科書の記述をを敵視する傾向がみられる。

 目的のためなら手段を選ばないというような、なりふり構わない態度である。この教科書の内容については全く問題がない以上、敵視する理由も見当たらない。

 実際に教科書を使用して授業することになる、現場の教員の判断が尊重されるべきである。
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