長崎県佐世保市で高校1年の女子生徒が同級生を殺害したとされる事件に関連して、加害者とされる生徒の問題行動を指した内容の相談が、事件前に長崎県の児童相談所に届いていたことが、7月31日までにわかった。

 相談は6月10日に、児童相談所部門も管轄する「佐世保こども・女性・障害者支援センター」に電話であったという。

 報道によると、相談をおこなったのは、女子生徒を診察した精神科医だった。この女子生徒は小学生の時に給食への異物混入事件を起こしていたことや、中学生の時には父親を殴打する暴力事件を起こしたこと、小動物の解剖をおこなっていることをあげ、「このままだと人を殺しかねない」と危惧するような内容だったとされる。

 しかしこの電話相談では、医師の守秘義務に抵触すると考えて女子生徒の氏名は明かさなかったという。児童相談所側は、生徒の名前が匿名だと対応は困難として直接的な対応はできなかった。

 事件が発覚した7月27日以降になって、長崎県は医師に照会し、事件を起こした生徒と相談の対象となった生徒が同一人物と確認した。

 患者に関する医師の守秘義務は、当然のことながら最大限に課されなければならないものである。ただ、このような場合には、医師の範疇を超えるような内容の問題であり、児童相談所への相談・通報が適切だと考えられるものの、医師の守秘義務と真っ向からぶつかることになると思っても不思議ではない。そのあたりの法的・実務的な整理が必要だという印象を受ける。

 今回の場合は、特定の誰かに故意ないしは重大な過失での手違いなどはないように感じる。責任を誰かにかぶせるという観点ではなく、今後の対応に活かすという視点で、今回の事例を分析してより良い対応を研究することが望まれる。

(参考)
◎逮捕の女子生徒巡り相談「問題行動ある」(NHKニュース 2014/7/31)
◎佐世保高1女子殺害 事件前に精神科医、県に相談していた(スポニチ 2014/7/31)
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