文部科学省は、2017年度にも改定が予定される新学習指導要領で、高校地理歴史科に新科目「近現代史」を新設する検討を始めた。

 次期学習指導要領では高校での日本史必修化も検討されているもと、単純な必修科目の増加では単位数が増えすぎることから、科目の整理統合なども必要となってくるとして、科目整理の一環として、現行課程で近現代史を中心に扱う「世界史A」と「日本史A」の2科目を統合して新科目を設置する案が浮上したという。

 日本史学習や近現代史学習そのものには異を唱えるつもりはないし、むしろ重要な課題ではある。

 しかし、具体的な進め方が問題になってくる。政府・文部科学省が主導する日本史必修化の案では、極右的・反動的な歴史観と結びついて反動的な内容を注入しようとする策動と一体になっていることが、彼らやそれを支持する勢力の言動からも透けて見えるので、注意が必要である。

 例えば産経新聞2014年8月17日『高校「近現代史」検討で「日本の立場」教育 中韓干渉の懸念も』では、以下のような記述がある。
近現代史の科目が新設されれば中国や韓国が強い関心を示し、干渉してくる恐れもある。日本の学界にも慰安婦問題などで自虐的な説を論じる学者が少なくなく、教科書問題に詳しい土井郁磨・亜細亜大非常勤講師は「中国や韓国の主張に沿った教科書がつくられたり、日本の名誉や立場をおとしめるような授業が行われたりする可能性も否定できない」と話す。

 産経新聞の極右的・反動的な主張とはいえども、これは裏返して読めば、「日本史必修化を求める勢力は、極右的・反動的な歴史観の注入を狙っている」ということでもある。

 「日本の名誉や立場をおとしめる」とは、極右派がいうところの「自虐史観」ではなく、むしろ史実を隠したりゆがめたりするような極右派の態度ではないだろうか。極右的・反動的な歴史観を教育現場に持ちこませない取り組みは、必要になってくるだろう。
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