沖縄県竹富町教育委員会は8月18日に臨時会を開き、中学校社会科公民的分野の教科書(3年生が使用)について、東京書籍版を採択することを決定した。

 竹富町では従来、石垣市・与那国町と合同で八重山教科書採択地区を構成していた。2011年の教科書採択協議会で、協議会会長(石垣市教育長)の一方的なゴリ押しにより、現場での評価が低く極右的で特異な記述をおこなっている育鵬社版の中学校社会科公民的分野の教科書の採択が答申された。

 石垣市と与那国町は答申通りに育鵬社版を採択した。しかし竹富町は、教科書採択協議会の手続きに著しい問題があり、協議会規約上も疑義があることを指摘し、地方教育行政法で教科書採択権限は教育委員会にあるとされていることに基づき、沖縄県の基地問題の記述が充実しているなどとして現場の評価が一番高かった東京書籍版の採択を決めた。

 一方で教科書無償措置法では、同一採択地区は同じ教科書を使用するという別の規定があり、法的に齟齬をきたすことになった。関係市町の教育委員会の全員協議会が開催され、東京書籍版を採択することを決めた。しかし石垣市と与那国町は採択を変えなかった。

 一方で文部科学省は、竹富町のみを一方的に「違法」と認定し、東京書籍版の教科書の無償給与を拒否した。竹富町は「町費で購入することも考えたが、それは国の圧力に屈したことになる」と判断し、有志の篤志家の寄付によって東京書籍版教科書を購入し、生徒らに配付した。

 2014年になり、教科書無償措置法における採択地区の単位が「市・郡」から「市町村」に改正され、竹富町単独での採択地区設置が法的にも可能となった。竹富町は採択地区の独立を求め、採択地区設定の権限を持つ沖縄県教育委員会が承認した。

 竹富町にとっては、採択地区独立後初めての教科書採択となる。また3年ぶりの正常化ともなる。

 教科書採択地区については、文科省も1990年代に、将来的な採択地区の縮小が望ましいという通知を出している。竹富町のケースがモデルケースとなり、より学校現場の実情にあった教科書の採択が進むことが期待される。
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