川勝平太静岡県知事は9月4日、2014年度全国学力テストで、小学校「国語A」科目の成績が全国平均以上だった県内の小学校の校長の氏名を、五十音順で公表した。昨年度に続く措置となる。

 また県内35市町の小学校の自治体別平均点も公表した。教育委員会の同意は得ておらず、知事の独断での自治体別・学校別の成績公表はできない・公表には教育委員会の同意が必要とした文科省の指針から逸脱することになる。

 川勝知事は校長氏名公表については「努力した先生の功績はたたえなければならない」、自治体別平均点公表については「文科省も地域間格差解消のためだと思うが、都道府県の正答率を公表している。その方針にのっとり、県内格差を解消するためだ」と、それぞれ話したという。

 しかし、そもそも一度の学力テストの平均点が学力の全てではない。学力はもっと幅広い概念を有する。また平均点では、ひとりひとりの学力状況はわからない。

 平均点を公表すると、平均点だけがひとり歩きして、平均点の数値や順位、全国平均ないしは自治体平均より上か下かなどが、学力のすべて・学校の「格」かのように扱われ、学校や校区地域への風評となっていくことは、実際にあちこちで指摘されていることである。

 全国学力テストや地域独自の統一学力テストで自治体別・学校別成績を公表したところでは、平均点が振るわなかった学校の生徒に対して学力テストの平均点をネタに心ない発言が浴びせられたり、インターネット上で学校が中傷されたりなどの、好ましくない例も報告されている。

 このような状況が起きているにも関わらず校長の氏名を公表すると、校長の氏名や人事は幅広く公表されている事項でもあり、当該校の児童・生徒・保護者・地域住民はもちろんのこと、第三者でも学校名が容易に割り出せることになり、実際には「全国平均を上回った学校」を公表したのと同じ状態になる。これでは好ましくない状態が起きることにもなる。

また自治体別平均点公表についても「県内格差解消」とは正反対で、逆に格差を拡大させるだけではないのだろうか。


(参考)
◎上位校長名、今年も公表=学テ「功績たたえる」―川勝静岡知事(時事通信 2014/9/4)
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