文部科学省は道徳教育の教科化について、実施を2018年度に先送りする方針を決めた。

 教科書の作成・発行に3年程度かかることが背景にあげられる。文科省は当初、同省作成の教材「わたしたちの道徳」を教科書に代用する想定で、早ければ2015年度からの実施を目指していたが、検定教科書が必要と判断した。成績評価についても、教科になった後に実施するという。

 しかしそもそも、道徳教育は教科になじまないものである。

 道徳は、自然や社会の現象に直面した際、児童生徒一人ひとりがどう考え判断するかという内面の力を育成することになる。外部の客観的事象・およびそれを理論化した学問的知見を元にした他の教科とは性質が違う。

 成績評価をおこなうと、特定の価値観が「正解」にされ、どれだけ特定の価値観に近づいたかが学習目的になってしまう。教育内容は政府・文科省の意向を受けることから、政権に近い特定の人間・集団にとって都合の良い価値観が押し付けられる危険性も高い。

 今回の先送りは、実施を万全にするために準備期間を取るという意味でしかない。道徳教育の教科化そのものの問題点には一切手を付けられていない。

 道徳教育の教科化そのものを中止すべきではないか。
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