2014年度より大阪市としての校庭芝生化事業が始まった。毎日新聞が、この事業によって芝生化に着手した小学校での作業のリポートと、芝生化で指摘される課題をまとめた記事「大阪市・校庭芝生化:始まる 地域と協力不可欠 管理が課題、学校に負担も /大阪」(2014年10月13日)を出している。

 大阪市では2014年度、芝生の購入や維持管理のための機械購入などの初期費用の補助金(上限530万円)を、学校と校区地域で作る実行委員会に出すことにしている。2014年度は幼稚園1園、小学校30校、中学校3校の計34校園で実施する。

 一方で、大阪府では大阪市内の学校も含めて、先行して別事業の枠で、一部学校での校庭芝生化事業が実施されている。その経験からは、校庭の芝生の維持管理に課題が指摘されている。

 記事によると、ある小学校教頭の声として「地域の人が芝刈り機の使い方を知らず、教職員だけで手入れせざるを得ない。負担がある」という指摘がある。また維持管理費用についても、先行する府の事業では4年目以降は自ら工面する必要があると指摘されている。

 校庭芝生化は運動場でのケガの軽減や、緑化による夏季の校内温度の緩和・周辺地域でのヒートアイランド現象の緩和などのメリットも指摘されている。これ自体は芝生化導入を検討する要因となるメリットではある。しかしその一方で、維持管理は業者が専門的に手入れするのではなく、学校と校区地域の自主的な対応に任されているうえに維持費用も十分とはいえないことで、学校・地域への負担となっているケースもみられる。

 大阪府岸和田市の中学校では、2009年に大阪府の事業で校庭を芝生化したものの、芝生が荒れて足を取られることなどを背景に「部活動に支障が出る」として、2010年に一部部活動の保護者が重機を持ち込んで芝生をはがす騒ぎも起きている。保護者の行動の可否はともかくとして、この手のトラブルが起きる危険性もはらんでいることになる。

 校庭の芝生化の理念自体は共感できる部分も多い。しかし、十分な維持管理体制を取らなければ、せっかくの芝生化も活かされることなく、逆にデメリットが目立つ結果にもなりかねない。校庭芝生化を導入するにしても、導入すればそれで終わりではなく、維持管理についても費用的にも人員的にも十分な体制をとるのが前提であろう。
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