愛知県で「体罰」事案について、懲戒処分の基準に該当する内容でも「特別の事情」を乱用して懲戒処分を極力避け、口頭注意などの内部処分にとどめていたことが10月15日までにわかった。内部処分では事案があった事実自体が公表されない。

2013年4月から2014年8月までに愛知県教育委員会が「体罰」で教職員26人を内部処分していたものの、この間に懲戒処分にあたるとしたのは1人のみだった。

この中には、愛知県立高校ラグビー部顧問の男性教諭が2014年2月、部活動指導中、部員が「気合が足りない」として、他の部員に対してこの部員への平手打ちを命じさせるという悪質な事案も含まれている。当該教諭は懲戒処分を受けず、文書訓告処分にとどまっている。この事案があったこと自体も2014年10月になって表面化した。

愛知県では2013年、豊川工業高校陸上部顧問だった渡辺正昭元教諭(現在は東京都の私立日体荏原高校保健体育科教諭)が、部員をデッキブラシで殴るなどして複数の部員を転校や不登校に追い込むなどした悪質な「体罰」事件が表面化している。この事件を背景に、「体罰」への処分を厳格化したものの、実際は表向きのポーズだけだったことになる。

しかも『中日新聞』2014年10月16日付によると、同紙の取材に対して愛知県教育委員会の野村道朗教育長は、「体罰」への厳罰化に否定的な見解を出しているという。
『中日新聞』2014年10月26日 『厳罰化に否定的県教育長、体罰処分で』
-盗みやわいせつなど他の不祥事と比べ、相対的に体罰の処分が軽いとの指摘がある。

体罰はいけない。ただ、たとえば生徒指導でついカッとなって、という場合。正当化するつもりはないが、指導の中で行われている。盗みのように公務員として弁解の余地がない犯罪や、児童生徒との信頼関係を再構築できないわいせつと同列には論じられない。

このような認識自体が、「体罰」正当化そのものである。「ついカッとなって」など感情的な暴力そのものであり、「指導」といって正当化できるものではない。一般社会では、相手のことが気に入らないからといって一方的に暴力的な行為に及べば、たとえ元々は自分の主張が正しく相手が変なことをいっていたとしても、暴力をふるう者が悪いとみなされてそれ相応の措置を受けるのは当然のことである。

「体罰」は弁解の余地がない犯罪そのものであり、児童生徒との信頼関係を再構築できなくさせるものである。こんなものを「指導」といえば正当化されるというのは大間違いである。

教育長の認識自体が、本来あってはならないことである。

(参考)
◎体罰の内部処分、常態化例外規定で「懲戒」回避(中日新聞 2014/10/15)
◎厳罰化に否定的県教育長、体罰処分で(中日新聞 2014/10/16)
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