長崎県壱岐市(壱岐島)の長崎県立壱岐高校で2004年、当時1年生だった男子生徒が練習中に大けがをして重い障害が残った事故がありました。被害生徒の男性(現在21歳)らが長崎県に対して計約7280万円の損害賠償を求めた訴訟で、長崎地裁は10月18日、生徒側の請求を棄却しました。


 報道によると、事故は2004年5月14日に発生しました。当時1年だった生徒は上級生と乱取り中、背負い投げを受けて頭部を強打し、外傷性くも膜下出血などを発症して意識不明になりました。高次脳機能障害や言語障害などの後遺症が残り、常時介護が必要な状態だということです。男性は休学扱いとして今でも高校に在籍しているといいます。
 原告側によると、生徒は高校入学と同時に柔道を始めた初心者だったといいます。また乱取り形式での練習も、事故当日が初めてだったといいます。「顧問教諭は練習を注視せず、原告が頭を打ったことにも気づかなかった」と主張していました。
 判決では「生徒は受け身を習得していた」などと判断して学校側の安全配慮義務違反を認めず、原告側主張を退けたということです。
 近年は学校での柔道事故が社会問題化し、似たような事故が報道などで大きく取り上げられるケースも相次いでいます。柔道事故被害者団体や専門家などの調査により、柔道での頭部損傷などの重大事故は日本特有のものだということが明らかにされつつあること、すなわち日本での柔道指導には全体として安全配慮に対する不備がある(もちろん個別には安全対策を徹底する指導者の方もいますが、全体としてみれば一部にとどまっています)ことが明らかにされつつあります。
 類似の訴訟では学校側の安全配慮義務違反を認める判決も相次いでいるもと、時代に逆行するような判断をするのはいかがなものかと疑問に思わざるを得ません。
 生徒側がどう対応するかは現時点では不明ですが、仮に控訴した場合、逆転判決が出ることを強く期待するものです。
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