高校日本史教科書から「集団自決」に対する日本軍の強制の史実が削除された問題で、政府は2月3日、教科書での沖縄戦記述について配慮を求める、いわゆる「沖縄条項」を教科書検定基準に盛り込まないという答弁書を閣議決定しました。


 この答弁書は、喜納昌吉参議院議員(民主党)の質問主意書に対する答弁です。
 「沖縄条項」を盛り込まない理由について政府は「他の地域に関する記述と異なる取り扱いをすべきではない」としています。原爆投下や各地の空襲など他の地域で起きた史実を踏まえて、それらに関する記述と比較して沖縄戦に関する記述を特別な取り扱いとすべきではないというのが従来からの文部科学省の見解ですし、今回の答弁書の決定につながっています。
 これだけを見れば一理あるようにも見えます。しかし「一部政治勢力の介入により、学問的見地とは全く異なる政治的な理由で、史実が特定の勢力にとって気に入らないから削除された」というこれまでの経過があって「沖縄条項」の提起に至ったことを踏まえる必要があります。また「沖縄条項」では「原爆や空襲などをないがしろにして沖縄戦の記述を特別視せよ」などといっているわけではありませんが、受け止め方が巧妙にずれています。
 もっとも、教科書執筆時に安心して史実に沿った記述ができるような状況になり、わざわざこういう提起をおこなう必要もないという状況になることが理想的です。しかし現状ではそうなっていないから、このような提起がなされたといえます。
 「沖縄条項」を提起した側の意図とそれに対する文部科学省の受け止め方には、大きなずれがあります。
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