奈良県下市町の車いすの女子生徒が中学校への入学を希望していたにもかかわらず特別支援学校への就学をすすめられた問題について、その後の状況を朝日新聞が取材し、記事にしています。


 記事は2009年4月17日付(web版)『車いすの12歳、地元中学に通いたい 町教委は事故懸念』。
 生徒は当面、奈良県立明日香養護学校に在籍することになりましたが登校はせず、養護学校教員が自宅への訪問教育をおこなうということです。
 生徒側、教育委員会側のそれぞれの言い分が紹介されています。
『車いすの12歳、地元中学に通いたい 町教委は事故懸念』より
 脳性まひで生まれた時から手足が不自由。階段の上り下りやトイレでは介助が必要だが、食事や身の回りのことはたいていできる。車いすで1人で移動でき、地元の小学校に通って、他の児童と一緒に授業を受けてきた。
 1年生のときは震える字で「1」と書くのがやっとだった。練習を繰り返し、いまは得意な漢字も早く書けるようになり、「カリカリという鉛筆の音を聞くのがうれしい」。夏休みや冬休み、次の学期に習う漢字をすべて覚える。毎日約2時間のリハビリを欠かさないがんばり屋さんだ。
 お気に入りの小説は「赤毛のアン」。丸ごと暗記し、どのページからでも最初の1行を聞けば、スラスラと暗唱できる。体育でも、6年生になると仰向けで25メートル泳げるようになった。
(中略)
 母親は「みんなと同じようになりたいという思いが娘を成長させた」。女児は「小学校時代の友だちと一緒に勉強したい」。そう語り、中学進学をあきらめきれずにいる。県教委に調整役になってもらい、解決の道筋を探っている。

 一方で教育委員会側は、中学校が傾斜地に建っていて階段が多いこと、特別教室への移動の機会も増えること、体が大きくなることで階段の昇降の際に転落事故が起きるリスクが高まることを懸念していること、予算面から介助員の増員やバリアフリー化は難しいことなどをあげています。
 また町教委が危険箇所として一番心配しているのは、校舎と体育館を結ぶ階段だということです。その階段には実は迂回路があることも指摘されていますが、町教委は「次の授業に間に合わず、保護者が望む同じ教育が実現できない」などとしているということです。
 生徒側の主張、町教委の主張ともに、それぞれに合理的だと考えられる根拠があります。結論こそ正反対ですが、いずれも生徒にとって最善の判断を熟考した結果であり、どちらが全面的に正しい・間違っているという性質のものではありません。
 ただ、生徒側の意向を可能な限りかなえる方向で対応を検討していくことも必要となってくるでしょう。もちろん町教委の判断が間違っていると即断するつもりはありません。しかし生徒側が通学を強く希望している上に、移動の問題さえクリアできれば普通校への就学にはほぼ支障がない様子なので、何とか工夫できないものでしょうか。
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