静岡市で「子どもが児童相談所に2年以上にわたって保護され続けているのは不当」などとして、保護者が静岡市・静岡県・国を訴えた訴訟が報じられました。


 原告の保護者は児童への「体罰」を認めながら、虐待ではないと主張しているようです。
 原告は、静岡市児童相談所を非難・糾弾するブログを開設しています。こういうブログを宣伝するのはモラルに反すると判断し、あえてリンクは張りません。
 目を通してみましたが、やはり虐待親の自己正当化というべきものです。自分たちのおこなっていることは正当な「体罰」であり虐待ではない、自分たちは児童相談所の不当介入で家庭をめちゃくちゃにされた冤罪被害者だ、「体罰」は善であり虐待とは違う、「体罰」をこれからもおこなっていく…そんな主張のオンパレードです。また法律の条文のうち都合の良さそうに見える部分だけを恣意的に切り取ったうえでねじ曲げて解釈し、自己正当化に使っている様子も見られます。
 虐待をおこなう親、また「体罰」をおこなう教師などに共通することとして、「自分たちの行為は、たとえけがをさせようが正当であり、虐待とは違う」というものです。こういう主張はある意味では「想定内」です。虐待で重大な結果を招いたというようなものでさえ、虐待加害者が正当な教育指導やしつけなどと強弁した例は枚挙にいとまはありません。
 今回の問題でも、児童にあざが発見されたということは、それほどの強い暴行が加えられていたことを意味しています。加害者がいくら自己流の定義を作っても、世間ではそれを虐待といいます。
 この原告、父親・母親ともに「教育における体罰条項を考える会」なる団体の発起人に名前を連ねています。この団体は学校教育法の「体罰」条項をなくし、「体罰」・暴力を合法化して推進しようという趣旨のようです。なおこの団体は、結成の趣旨に極右思想とみられる内容が掲げられ、また発起人には戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長もいます。
 さらにブログでは原告の「支援団体」として、「戸塚ヨットスクール」の名前も明記されていました。
 この原告はごく単純にいってしまえば、戸塚ヨットスクール並みのトンデモ思想の持ち主であると判断できます。
 原告が作成しているブログの記述を読むと、「自分たちの『体罰』推進の思想こそが『科学的』で、その『科学的根拠』を無視して一般社会の『体罰=虐待』の俗物思想・誤った情報に合わせる児童相談所の態度は偏向している」などと、本来の意味での科学の到達点とは正反対のことを本気で思いこんでいる様子だということが浮かび上がります。
 科学的なのはこの原告が「非科学的な俗物思想・誤った情報」と思いこんでいる内容で、非科学的なのはこの原告や支援者であることは今さら説明するまでもありません。いくら非科学的で独善的な思想を振りかざしても、世間の反応や一般的な教育学・心理学・児童福祉などの到達点は、こういう「体罰」・虐待は有害なだけという方向に向かっています。
 児童虐待事件では、児童相談所がなかなか踏み込んだ対応がとれず、その結果最悪の事態を招くというケースがこれまで多く報じられてきました。しかしそれでも、この事件では児童相談所が毅然とした対応を取っている、このことこそが原告の主張に何の根拠もないということを側面から裏付けています。
 子どもを守るという観点からは、今回の問題では児童相談所が全面的に正しいといえます。
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