静岡県立磐田南高校3年生だった2004年5月、柔道部の練習中にけがをして全身麻痺・呼吸困難の障害が残ったのは学校の安全配慮義務違反だとして、けがをした男性(23)と家族が静岡県に損害賠償を求めた訴訟で、静岡地裁は12月21日、原告側請求を棄却しました。


 生徒は練習中に頸椎脱臼骨折などのけがをしました。その際にうつぶせで倒れていた生徒を、顧問教諭らがあお向けにして練習会場の外に移動させました。このことについて生徒側は「けが人の体位を変えたことは注意義務違反で、症状を悪化させた」と主張しました。
 一方で判決では、うつぶせで放置した場合顔の圧迫で気道閉塞が起きる可能性があると指摘し、移動させたのは元生徒への危険を避けるためと判断しました。また移動させたことが症状拡大につながるとはいえないとも指摘しました。
 近年は柔道部関係の重大事故が次々と社会問題化しています。須賀川事件(2003年10月)や埼玉県立越谷総合技術高校事故(2002年7月)では生徒側の訴えを認めています。須賀川事件では民事での勝訴判決が確定し、また埼玉の事件でも埼玉県は上告しない意向を固めたということです。一方で横浜市立奈良中学校事件(2004年12月)では顧問教諭の刑事責任を問えなくなる結果になるなど、司法判断も割れています。このほか、神戸市立御影中学校柔道部熱中症死亡事件(2005年8月)の民事訴訟も現在係争中です。
 今回の事例は原告側にとっては厳しい判決です。移動と症状悪化の因果関係について認定するのは困難かもしれませんが、少なくともけが直後に移動させたことが適切なのかどうかは再検討を要するという印象を受けます。
(参考)
◎柔道部練習事故訴え棄却 静岡地裁判決(静岡新聞 2009/12/21)
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