愛知県犬山市の田中志典市長は3月16日、同市で検討されていた教育委員の増員について、人事案を議会に出さないことを決めました。このため教育委員会が不参加を決めていた全国学力テストについて、次期学力テスト実施日までに賛成派・反対派の教育委員の比率が変わらないため、今年も参加が見送られることが確定しました。


 田中市長は『朝日新聞』のインタビューに応じています。(『朝日新聞』2008年3月16日『学力テスト不参加、犬山市長「混乱に巻き込みたくない」』)
 インタビューによると田中市長は、全国学力テストには問題もあるが利点もあるとして、個人的には実施すべきだという見解を示しています。一方で「マスメディアに対立を強調された」などとして「混乱に巻き込ませたくない」という判断から今回の教育委員増員見送りを決めたとしています。ただ今回の増員を見送っただけで、将来的には増員を検討しているということです。
 田中市長は学力テストの是非についてはもっと市民的な議論をすべきだという認識を示し、また「公教育への政治介入」という批判については「そのつもりはない」としています。
 全国学力テストを導入するために教育委員を増員すると見られかねない主張をおこなったことや、「独裁体制」などと教育長を激しく非難する発言をおこなったことなど、公教育への政治介入と受け止められかねない言動もあったことは確かです。またマスメディアが過度に対立を強調したのかどうかについては、ていねいに検証されなければなりません。しかし市民的な議論自体は重要なことでしょう。
 残念ながら現在のやり方の全国学力テストでは、過度の学校間・地域間競争をあおるだけで一人一人の児童・生徒の学力向上にはつながらないこと、不正が横行すること、採点の際の問題点、統計調査なら悉皆調査の必然性はないことなど、百害あって一利なしといわざるを得ません。テストそのものの中止か、少なくとも抜本的改善が重要ではないかと考えられます。
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