作家・大江健三郎氏の著作『沖縄ノート』で「沖縄戦で集団自決を命令したと虚偽の記述をされ名誉を傷つけられた」などとして元日本軍の戦隊長らが大江氏と発行元の岩波書店を訴えていた訴訟で、二審大阪高裁は10月31日、一審に続いて原告側の訴えを棄却しました。


 二審判決でも一審と同様、「軍が集団自決に深く関与したことは否定できない」と結論付けました。一方で原告の戦隊長個人らの命令の有無については断定できないとしています。
 なお歴史研究の到達点では「日本軍全体として住民を集団自決に追い込む体制が作られていったことを指して『集団自決』強制」とされています。個別の隊長の命令の有無を問うのは別次元の問題であり、個人の命令の有無は全体的な「集団自決」体制を否定できるものではありません。このことを考慮すれば、二審判決も歴史研究の到達点に沿った全面勝訴だといえます。
 原告側を支援する勢力は学校の歴史教科書記述を変えさせることもねらっているとされています。実際に文部科学省は訴訟を口実にして、高校日本史教科書の教科書検定で集団自決の記述を変えさせようとして社会問題になっています。しかしこの訴訟で二審でも一審と同様の判決が出たことは、原告側や文部科学省の態度が特定の政治的主張からおこなわれたものであり、学問的には道理がないことを示しています。
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