政府の教育再生会議は4月9日、道徳を教科化して新設する構想を打ち出した「徳育」(仮称)についての議論をおこないました。徳育(仮称)の議論の中で、成績評価に関しては反対意見が相次いだということです。


 道徳は個人の内面のものという性質上、成績評価にはなじみません。この点が、客観的事実や学問的な定説に基づいて客観的に成績評価が可能な一般教科と大きく異なります。
 道徳を無理に成績評価しようとすると、「望ましい道徳像」という特定の価値観に沿った基準を設けなければならなくなります。特定の価値観にあうものが高く評価され、あわないものが低く評価されることは、児童・生徒の内面を統制することにもつながります。
 徳育(仮称)を打ち出した教育再生会議ですら、成績評価には否定的な意見が相次ぎました。道徳の教科化を推進する側ですらこのような意見が相次ぐことを考慮すれば、そもそも道徳を教科として扱うこと自体に無理があるということを、推進側が自ら証明した結果になったのではないかと感じます。徳育(仮称)の構想そのものを撤回しないとどうしようもないという思いがあります。
 道徳教育については、児童・生徒が主体的に内面や価値観を醸成し、自ら考え行動する力を育成することが必要になってきます。しかし道徳を教科とすることでは、仮に成績評価をしないとしても、特定の価値観に基づいた教材内容の指針やそれに基づいた教科書・教材の作製などにつながるのは必然的です。ということは道徳の教科化は、特定の価値観を一方的に刷り込むといった、道徳教育で一番してはいけない状況に陥ることにつながります。
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