政府の教育再生会議は6月1日、第2次報告「公教育再生に向けた更なる一歩と『教育新時代』のための基盤の再構築」を正式に決定しました。


 報告の内容は唖然とする上、論議も拙速すぎるという印象がまぬかれません。
 「学力向上として授業時間増加・土曜日授業の復活」「徳育の教科化」「すべての国立大学で9月入学枠の設定」「高校での奉仕活動必修化」といった内容が提起されているようですが、いずれも疑問を持つものばかりです。
 学力向上そのものは否定するものではありません。しかし単純に授業時数を増加して学力向上を図ろうとする発想には、すでに限界がきています。日本の学習指導要領に基づく教育体制では、学問の系統性や子どもの理解段階などをあまり考慮していないという指摘もあります。そんな中で単純に授業時数だけを増やしても、望む効果は得られないでしょう。学力向上には、学習内容を精選するカリキュラムへと転換するしかないといえます。なお諸外国では、日本より少ない授業時間でも高い学力水準を保っている国もあります。
 徳育の教科化など問題外です。自ら考えて道徳を内面化する力が重要なのに、一方的に徳目を押しつけるのは時代錯誤です。
 大学の9月入学枠については、必要性を感じた大学が自主的に設定するのならば否定はしません。しかし全国の国立大学で一律に、しかも早ければ来年にもという超早期に導入する必要性は感じません。大学関係者をはじめ国民的な議論が必要になってくる問題なのに、一部の思惑で性急かつ一律に導入する必要性はないでしょう。
 奉仕活動の必修化など全くの問題外です。奉仕活動と称して強制的にボランティア活動などをおこなわせることはボランティア・奉仕の精神とは決して相容れませんし、ボランティア関係者にとっても迷惑でしょう。
 報告の主旨は、「意味不明なことを一方的に教育現場に押しつけ、教育をさらに混乱に陥れる」ことにつながりかねない危険性が高いものだといえます。
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