高校日本史教科書での「集団自決」検定問題について、米紙『ニューヨークタイムズ』が10月7日付で記事にしています。『しんぶん赤旗』(2007/10/9)と『琉球新報』(2007/10/9)が同記事の要旨を紹介しています。


 記事は『Okinawans Protest Japan’s Plan to Revise Bitter Chapter of World War II』(第二次世界大戦の悲痛な一章を見直す日本政府に沖縄の人々が抗議)というものです。
 記事では沖縄戦の生存者にインタビューしています。証言によると、集団自決を迫られた様子や、「日本軍がそこにいなければ、集団自決は決して起こらなかった」「日本軍が自決していないのを目撃して自決をとどまった」などと克明に述べられています。また検定に抗議する県民大会参加者の声についても触れられています。
 「集団自決」強制が曖昧になるような検定方針の変化については、記事では「教科書にはこの25年間、集団自決の強制が史実として受け入れられてきた」(大要)と指摘しています。
(原文)For the past quarter of a century, Japan’s high school textbooks had included the accepted historical fact that that Okinawans had been coerced into mass suicides by Imperial Army soldiers.

 その上で、「文部科学省は、検定方針の変更の論拠を示していない。はっきりしているのは、検定結果発表のタイミングが、公立学校で愛国心を強調する新法(改悪教育基本法のこと)を通過させた数ヶ月後だったことである」(大要)と指摘しています。
(原文)The ministry said that it “is not clear that the Japanese Army coerced or ordered the mass suicides” but cited no fresh evidence to explain its change in policy. What was clear, though, was the timing of the announcement, which came a few months after the Japanese government passed a new law emphasizing “patriotism” in public schools.

 また記事では、このような検定結果になったことについて、保守派の政治家の策動についても踏み込んでいます。
 今回の検定の変化は、新史実の発見や学説の変化に基づいたものではなく、一部政治勢力による政治的思惑によって検定結果が影響されたということを、改めて浮き彫りにしています。
 文部科学省は「検定意見撤回は政治的介入にあたるので、検定意見を撤回しないままに修正申請が出されれば応じる」という主張です。しかし、「教科書調査官に沖縄戦の専門家がいなかった」「教科書調査官に『新しい歴史教科書をつくる会』と密接な関係を持つ人物がいた」「検定を変更するような学説の変化があったわけではないのに、特定グループが裁判を起こしたことだけを理由に検定内容を変更している」などが明らかになっているなど、むしろ元の検定そのものに政治的介入があったという疑いがきわめて高いものです。「政治的介入を除去して元に戻す」ことを「政治的介入」と主張するのは、全くの筋違いではないかと感じます。
〔参考資料〕

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