大阪市会の「子ども市会」が8月7日におこなわれた。市内の中学生が「子ども議員」となって大阪市政への提案などをまとめて、市会本会議場で市長などが出席した模擬議会を開いて発表する、夏休み恒例の行事である。

 「子ども議員」は事前に大阪市会の6常任委員会に対応する班に分かれて模擬委員会を開催し、提案をまとめていた。ゴミ問題、商店街活性化、緑化、放置自転車対策、水道、市営地下鉄・市バスなど市政の各分野について提案が出された。

 出席した中学生からは、大阪市の学校給食について厳しい批判が出る一幕があり、取材した各マスコミとも給食問題を大きく取り上げている。

 中学生は、デリバリー方式で実施されている中学校給食について「おかずが冷たく、おいしいと言っている生徒はほとんどいない」などと発言し、自校調理方式に改めるよう求める発言をおこなった。橋下徹市長は「6年くらいかけて、学校で調理する給食に変えていきたい。味の改善もしっかりやっていく」と答弁した。また橋下市長は「給食を食べて、まずいと思う人はどれくらいいますか」と議場の「子ども議員」に逆質問し、ほとんどの生徒が挙手した。

 大阪市の中学校給食は橋下市政が重点施策としてきたものではあるが、まるで導入そのものが目的化・質の改善には目を向けないとすら思われるレベルの乱暴な手法で混乱が拡大し、不満を拡大させてきた。

 2011年秋に前市政が選択制弁当方式での学校給食予算をつけたが、その直後に大阪市長選挙が実施され、橋下徹氏が大阪市長に就任した。前市長と激しく対立していた橋下市長は「中学校給食は自分の実績で、前市長は給食を導入すると公約しながら何もしなかった」などと不正確な内容に基づく攻撃をおこなった。なお、前市政時代は橋下徹氏は大阪府知事だったが、大阪市中学校給食導入への補助金を拒否している。

 選択制で中学校給食が導入されると、「おかずが冷たい」などの不満が出て利用率は低迷した。利用率向上のために橋下氏や大阪市教委がとった策は、全員給食を導入して利用率を強制的に100%に上げるという策だった。問題点が改善されないままで全員給食を導入した形で、中学生からの不満は広がり混乱が拡大した。

 大阪市会の代表質問では、中学校給食を視察した市会議員が、中学生から「おっちゃん、これ給食と違うで、エサやで」と苦情を受けた話も紹介されたことがある。しかし橋下市長は中学生の発言の本質には目を向けずに「エサ」の単語に揚げ足を取り「自分の子どもがエサなどと発言したら叱る。食育の向上が必要」などと話をすり替える答弁をおこなった。

 中学校給食への不満は増大する一方で、橋下氏と大阪市教委が編み出した奇策は「ふりかけ」。おかずが冷たくおいしくない、残す生徒も多いという実態に対して、ご飯にふりかけをつければいいじゃないかという、わけのわからないことを言い出したのである。

 現に中学校給食に直面している中学生が学校給食への不満の声をまとめ、自校調理給食を提案する発表をおこなったのは、法的拘束力はないとはいえども極めて重要なことではないだろうか。大阪市政はこの声を正面から受け止め、できるだけ早く改善していく必要がある。

 橋下市長は2015年12月の任期満了に伴い市長職から手を引くことを表明しているが、後継の市長が誰であれ、中学生の学校給食の提案に耳を傾けて早期の対策をとってほしい。
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