『毎日新聞』2018年4月11日付(東京朝刊、ウェブ版)が、記事『ニッポンの食卓 第2部 育ちの現場から/1 中学校でも完全給食を』を掲載している。

 中学校給食についての状況をリポートしている。

記事で指摘されている内容



 同記事では、学校給食の歴史に触れながら、小学校の給食は1960年代に完全給食実施率が90%を超えたが、中学校では完全給食実施が遅れてきたことや給食実施率に地域差があることについて触れている。

 中学校給食の実施率が歴史的に伸び悩んだことについては、記事では、生徒急増期に学校建設が優先されたことや、「家庭で弁当を負担することが当然視された向き」などを指摘している。後者については、いわゆる「愛情弁当論」にもつながる流れになっていく。

 2005年の食育基本法の改正前後から、学校給食が「食育」と位置づけられるようになり、2000年代後半前後からの約10年間で中学校給食導入が急激に進んだと指摘されている。

川崎市の状況のリポート



 記事では、川崎市での中学校給食実施までの過程について紹介している。

 川崎市では中学校給食実施を求める保護者の声が大きかったが、市側に「愛情弁当論」が強く、数年前までは中学校給食導入に消極的だった。2013年に市長が交代して中学校給食導入へと変化し、センター方式での中学校給食を導入している。

大阪市の状況:記事での指摘は一面的では



 記事では大阪市の状況についても、以下のように触れている。

大阪市は一時、中学校給食で弁当との選択方式を採用したが、給食を選択しない生徒がコンビニエンスストアのおにぎりやパンなど簡単な食事で済ませてしまい、全員給食に切り替えた。


 記事で指摘されている内容自体は、事実の側面もある。その一方で、背景について十分に書き切れていないので誤解を招きかねないという印象も同時に受ける。

 大阪市では2011年、平松邦夫市政のもとで、中学校での配送弁当方式での選択制給食を導入する予算が可決・成立し、翌2012年4月から実施されることになった。

 しかしその直後の市長選挙で橋下徹が市長に就任し、導入時には橋下市政になっていた。

 実際に選択制での中学校給食を実施すると、「おかずが冷たい状態で配送されておいしくない」「量の調節ができない」などの声が出て、選択率が低迷した。

 橋下は指摘された問題点を解決することもせず、大阪市教委の大森不二雄教育委員長(現・大阪市特別顧問)などとともに、「問題点の解決はしないが、そのまま全員給食にすることで必然的に利用率100%にできる」という形で、2014年度に選択制から全員給食に移行した。

 生徒からの不満は拡大し、混乱を拡大させることになった。異物混入事件などの問題も相次いだ。

 大阪市会が夏休みに市内の中学生を対象に実施し、生徒たちが市政課題について話し合い発表する「子ども議会」でも、中学校給食の問題が論点となり、マスコミでも大きく取り上げられるなどした。

 大阪市は、自校調理方式や近隣の小学校で調理して配送する「親子調理方式」を段階的に導入する方針に切り替えることになった。2018年時点では切り替えの途中であり、配送弁当方式と自校調理・親子調理方式が混在している。全中学校での完全移行は2019年9月の予定となっている。

中学校給食に関する課題



 中学校給食の実施率はこの10年で急増したが、まだ課題も多い。

 導入したとはいえども、選択制の配送弁当方式で実施している自治体も多い。また前述の大阪市のほかにも、神奈川県大磯町でも、2017年1月に導入されたデリバリー弁当方式での全員喫食制の中学校給食が生徒からは不評で残食率が突出し、議会でも問題視されマスコミ報道でも大きく取り上げられた末に、2017年秋に一時休止した問題もあった。

 配送弁当方式は、初期コストが安いという側面はあるものの、長期的に見れば大阪市や大磯町のような問題とも一体となってくる。

 食育というのなら、導入するにしても、自校調理方式、ないしはそれに準じる「親子調理方式」やセンター方式などで導入する必要があるのではないか。
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