吉村洋文大阪市長は4月12日、市立小学校・中学校・高校教員の初任給について、2019年度採用者から約2万9000円引き上げる方針を発表した。

[caption id="attachment_16077" align="aligncenter" width="600"]吉村洋文大阪市長会見 記者会見する吉村洋文・大阪市長(2018年4月12日、NHKニュースより)[/caption]

 政令市の市立学校の初任給としては、もっとも高い水準となるとしている。教員の大量退職を控え、優秀な人材を確保する一環としている。

 教職員の初任給引き上げの方針は、2017年11月には打ち出されていたが、そのことを具体化した形になっている。

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 今後、関連条例案を大阪市会に提出し、市会での審議を経て可決を目指すとしている。

大阪市での教員の労働条件の悪化



 その一方で大阪市では維新の市政によって、教育現場への政治的な介入・締め付けの傾向や、それに伴う学校の教育条件の低下・教職員の勤務条件の悪化が、他地域以上に進んでいる。

 学校選択制導入、全国学力テストの学校別成績公表、大阪府の「チャレンジテスト」に上乗せする形で大阪市独自の統一テストを実施して高校入試の内申点に反映、教科書採択問題、教育予算の総額は増えていないのに維新にとっての目玉事業とされる分野だけを7倍に増やしたことで通常の教育活動の予算が削られたこと、公募校長制度での混乱、など、維新のせいで混乱をまねいている。

 そのために、教員志望者が、大阪生まれ大阪育ちで大阪で教員になりたいと思っていても、維新政治での混乱を避けて他県に流出する事例が相次いで報告されている。また現役教職員も条件と機会があれば他県や私学に流出したり、早期退職を決断する事例も相次いでいる。

 そして現場では教職員不足で、講師も確保できずに人手不足の悪循環に陥っている。

 さらには主務教諭制度として、教職員の中に新しい職階を作り、37歳までに合格しない場合には定年まで37歳水準の給与に据え置くという方針も出した。主務教諭制度は、教職員集団の中に分断を持ち込むと指摘されている。

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施策は見当外れ



 大阪市では、教育現場での数々の混乱を改善して解決を図るどころか、より傷を広げるような施策を繰り返している。

 教員採用試験でボランティア経験者に加点する方針など、見当違いの施策を繰り返し打ち出している。

 初任給が上がる方向性だといっても、「教職員の勤務条件悪化の元凶となっているものが取り除かれていない」「主務教諭制度によって将来的には給与は頭打ちになる危険性がある」というのとセットである。これでは、全体的に見れば、何のメリットもないどころか重大なデメリットとなり、教員志望者を大阪市から遠ざけてしまう傾向は止まらないままとなってしまうだろう。

 維新の強権的・教職員締め付け・政治介入的な考え方を背景とした教育行政から転換しなければ、混乱と困難は続くことになる。

(参考)
◎大阪市 教員初任給を全国最高へ(NHKニュース 2018/4/12)
◎大阪市の教員初任給「全国最高額めざす」 人材確保狙い(朝日新聞 2018/4/12)
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