6月18日朝に発生した大阪府北部地震で吉村洋文大阪市長が「大阪市内の学校はすべて臨時休校にする」とツイッターに書き込んだ(同日午前9時20分)ことで、学校や保護者に不要な混乱を招いた問題があった。

 ツイッターを見た保護者が学校に問い合わせ、通常授業や校内待機をおこなっていた学校は「そんな話は聞いていない」と困惑した。結果的に、教育委員会が午前11時4分、各学校への一斉送信メールで「全市で臨時休校」の通知を出した。

 この問題では吉村市長が、休校を決める権限がないのにツイッターに書き込んだなどと批判が上がっていた。

http://kyoukublog.wp.xdomain.jp/post-17381/

 吉村市長はこの件について「超法規的措置」と発言したと報じられ、また「災害対策本部長でもある市長が休校決定の権限を持つ」かのようにも主張した。

大阪市会での質疑


 6月22日に開かれた大阪市会教育こども委員会では、ツイッター書き込みの内容も含めた当日の「臨時休校」判断の経過に関する質問がおこなわれた。

 大阪市教委担当者は「大阪環状線・大阪地下鉄の双方が7時時点で全面運休している場合は休校とするという規定を柔軟に適用した」「9時の時点で市長と教育長が協議して休校を決めた」などとする見解を示した。

 しかし市教委の見解は、吉村市長の言い訳が先にあり、その言い訳の結論のために無理やりつじつま合わせをさせられたという印象を受ける。市教委については、市長に勝手なことをされた上に都合が悪くなると罪をなすりつけられたにもかかわらず、それでも守らなければいけないような状態にさせられて気の毒でもある。

学校ホームページから市長の嘘が浮かび上がる


 大阪市立学校では、各学校ごとにウェブサイトを開設している。ウェブサイトの中にはブログ形式の「学校日記」もある。

 学校によっては、地震に際して、保護者向け一斉送信メールの内容をウェブサイトにも転載したりするなど、地震当日の学校の動きや学校からのお知らせを発信している場合もあった。

 地震当日にアップされた大阪市立の複数の学校のウェブサイトを見比べてみると、市長が当日にスタンドプレーをした上、分が悪くなると嘘をついているのではないかという疑惑が浮かび上がる。

 教育委員会が午前10時に「授業をおこなっている学校では教育活動を継続」と指示を出していることが、複数の学校のウェブサイトから浮かび上がる。これは、吉村ツイッターの「9時20分に休校措置をツイッターで流す」とは相反することになる。

大阪市立中学校

先ほど10時に教育委員会より指示がありました。

「引き続き校内で安全確保のうえ、教育活動を継続し、自宅待機の生徒については、再登校させないこと。」

(A中学校)


大阪市立中学校ウェブサイト
18日午前7時58分に発生しました地震につきまして、大阪市教育委員会より、「臨時休業措置をとられていない学校につきましては、引き続き校内で安全確保のうえ、教育活動を継続してください」という指示がありました。
本校では、地震直後に校内の安全を確認し、通常通りの授業を行っています。

(B中学校)


大阪市立小学校

本日全市の学校園が休業する等の報道がありますが、
本日10時の教育委員会からの連絡では、学校に登校している場合は、
安全に留意しながら学校生活を送るようになっています。

(C小学校)


 さらに別のD小学校のウェブサイトでは、「10時30分に『休校を指示』とする市長ツイッターについて、保護者からの問い合わせがあったが、市教委から休校を指示されたような連絡は見当たらない。10時40分に市教委に確認の電話を入れたが『そのような指示はない』と返答があった」とする内容が記載されていた。

 これはいずれも、吉村ツイッターに関する疑惑が報道される前の時点でアップされたものである。

 吉村市長が本当に「9時に教育委員会との協議の上で全校一斉の休校を決めた」というのなら、「教育委員会が10時に『臨時休業措置をとっていない学校ではそのまま教育活動を継続』という指示を出す」だとか、「10時40分に問い合わせを受けた教育委員会が『全校一斉休校の事実はない』と返答する」だとかは、ありえないことになる。

 学校側には嘘をつく理由は見当たらない。離れた場所の複数の学校がほぼ同じ時間帯に同じようなことを言っていることからも、吉村市長が嘘をついているとしか考えられないということになる。

 また、そもそも法令上は、休校は学校長が判断するものとなっている。大阪市の災害対策マニュアルでも、地震時の休校は第一義的には校長が判断するとされている。法令上でも災害対策マニュアルでも、教育委員会とその長たる教育長が校長を援助するような形・ないしは校長の代理の形で判断することはありえても、市長が教育行政の細部に介入する余地はない。

 吉村市長は、災害対策本部が設置されると市長が本部長になるということに目をつけて、自分の行為を正当化している。しかしこれでは、マニュアル無視で混乱させた、ないしはマニュアルに重大な不備があったということの、どちらかに該当するということにもなる。いずれにしても、吉村市長の責任は重大だということになる。
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