卒業式などでの「君が代」不起立を理由に定年退職後の再任用を拒否されたとして、東京都立高校の元教諭22人が東京都を相手取り損害賠償を求めた訴訟。最高裁第一小法廷は7月19日、東京都に約5000万円の損害賠償を命じた一審・二審判決を破棄し、東京都が裁量権を乱用したとはいえないとする判決を出した。

 元教員側の逆転敗訴となる。

経過



 元教諭らは、卒業式などでの「君が代」不起立を理由に処分を受けた経歴がある。2006年度から2008年度にかけて定年退職後の再任用を希望したが、東京都からは不合格にされたり再任用取り消しの措置を受けた。

 一審東京地裁判決では、式の進行は混乱していなかったことなどをあげ、不起立を不当に重くみていることは裁量権の乱用だとして約5000万円の損害賠償を命じた。二審東京高裁も一審判決を支持していた。

 一方で最高裁は、「著しく合理性を欠くとはいえない」などと指摘した。

私見



 「君が代」については歴史的な経緯から、否定的な意見も含めて様々な感情があり、一律に押しつけるのはふさわしくない。

 「君が代」の一点を取って、教職員としての資質に欠けるとか、定年退職後の再任用を拒否されるほどの重大な問題があるとは、とうてい思えないものである。生徒への暴力行為やいじめまがいの行為・人権侵害行為などより「君が代」不起立のほうが社会的に重い罪だとでもいうのか。

 また式典などを含む学校行事については、学校の自主性を尊重して運営されるべきものである。特定の歌に起立斉唱を義務づけるなど、特定のやり方を教育委員会として押しつけること自体が好ましくない。

 「君が代」は、強制という手段によって、教育委員会の意向に無条件に従う教員かどうかの踏み絵にされ、意に沿わない教員を排除するための口実となってしまっている。これでは、「君が代」そのものについては肯定的な意見を持つ人や中立的な人でも、このような形で「君が代」を悪用されるのはふさわしくないと感じるのではないかとも推測される。

 最高裁判決は、時代に逆行しているように感じる。

(参考)
◎君が代不起立で再雇用拒否 最高裁、都の裁量権認める(朝日新聞 2018/7/19)
◎君が代不起立 元教職員逆転敗訴(NHKニュース 2018/7/19)
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