吉村洋文大阪市長は8月2日の記者会見で、学力テストの結果を学校の人事評価に反映させる仕組みを作りたいという意向を表明した。

 7月31日に全国学力テストの結果が公表されたことを受けたもの。大阪市では、政令市別の順位は2年連続で20都市中最下位だったとして、対策を強化する考えを示した。

https://www.youtube.com/watch?v=T0WhtrKOg2U

対策は見当外れ



 そもそも全国学力テストによって、地域別の順位競争にばかり目が奪われていること自体が、大きな誤りである。もっとも全国学力テスト自体、そういう目的で導入されたものではあるが、批判を浴びて表向きは「個別の児童生徒の学力把握」という名目で導入せざるをえなかった。

 児童・生徒がどの単元でつまずく傾向があるかなど全体としての大きな傾向の分析は必要かもしれないが、平均点や地域別の順位は重要な情報ではない。それを過剰に絶対視すると、テストの点数や順位を上げることだけが目的となって、テスト対策に特化したいびつなやり方が持ち込まれることになる。

 吉村市長によると、大阪市では具体的に、各学校ごとに正答率引き上げの数値目標を決め、その目標を達成したかどうかで教職員の人事評価や給与・ボーナス額、学校裁量予算の額にも反映するとしている。

 これは最悪の愚策である。テストの平均点を上げるという短絡的なことに追い立てられ、子どもに身につけさせたい学力とはなにかなどの本質的なことを考えられる余裕もなく、試験対策の類題・過去問演習を繰り返しおこなわせるなどのゆがんだ施策に追い立てられる恐れがある。また、成績が振るわないと見込まれる子どもを当日に欠席させる、試験時に誤答に気付かせる合図を送るなどの不正がまかり通る恐れもある。

 これでは、児童・生徒も教職員も疲弊する一方である。学校現場を破壊・荒廃させることにつながっていく。

 大阪市ではただでさえ、維新によって、「教育基本条例」による教職員締め付け、「君が代」強要、学校選択制、「主務教諭」制度、ゼロ・トレランス的な「学校安心ルール」など、学校現場を疲弊させるような施策が持ち込まれている。学校現場をさらに疲弊させるようなことにもなりかねない。

(参考)
◎学力テスト結果で教員人事評価も(NHKニュース 2018/8/2)
◎学力テスト政令市最下位で…校長らの給料に反映の方針 大阪市(MBSニュース 2018/8/2)
◎「学力調査結果を教員ボーナスに反映」最下位に大阪市長(朝日新聞 2018/8/2)
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集