横浜市立中学校の昼食配送弁当事業「ハマ弁」が、また迷走しているという話。

 横浜市教育委員会が市立中学校宛に、各校で「ハマ弁」の試食会を開くこと、および教職員は必ず試食して保護者へのPRをすることを求めている通知文書を出していたことがわかった。

 神奈川新聞2018年11月6日『ハマ弁PRに先生を“動員” 横浜市教委、公費で試食会 「暴挙」現場から批判も』が報じている。

通知文書の概要



 通知は2018年10月31日付でおこなわれたものだという。神奈川新聞が文書を入手し、文書の概要を報道している。

 通知文では「先生方のアピールは大きなものがある」として教職員にPRを求めた上で、PRするポイントについても具体的な指示をおこなっているという。各校ごとに試食会を開催し、常勤教職員は全員参加するように求めた。試食会にかかる経費は、教職員研修費として横浜市教委が全額負担するとした。

市教委の方針に反発も



 神奈川新聞によると、以下のような批判の声が紹介されている。

 これに対し、ある教職員は「市教委による暴挙だ」と批判。またある市議は「喫食率向上だけを狙った愚策」と切り捨てた。


 中学校給食については、実施している自治体としていない自治体の落差が激しかったが、実施していなかった自治体でも2000年代後半~2010年代に急速に導入の動きが進んだ。政令指定都市でも、実施していない地域として有名だった大阪市・神戸市・川崎市などでも、それまでの方針を転換して導入に踏み切っている(大阪市は導入経過に著しい問題があったが、それはここでは触れない)。

 しかし横浜市は、いまだに中学校給食の導入をかたくなに拒否し続けている。その代わりに、昼食提供事業として横浜市独自の配送弁当方式「ハマ弁」を2016年度より導入した。家庭弁当などとの選択方式となっている。

 しかし利用率は思わしくない。10%の利用率を想定してシステムを作っていたものの、喫食率は制度開始当初から大きく低迷し、2.3%(2018年9月)にとどまっている。1食あたりの料金値下げなどの対応策も打ち出したが、利用率改善には至っていない。

 配送弁当方式でおかずが冷やされた状態で出ることや、予約システムが複雑で利用しにくいことなどの問題が背景にあるとみられている。

 想定を大きく下回るような利用率低迷のため、1食を作製するために必要なコストが6000円前後になっているという指摘もあることなど、税金の使い方としても疑問が持たれている。

 昼食提供事業にしてもデリバリー式給食にしても、配送弁当方式で実施しているところでは多かれ少なかれ各地で起きているような課題が、横浜市では大きな問題となって現れている形になっている。

 横浜市は中学校給食導入を否定し続け、「ハマ弁」の利用率向上にこだわっているような形になっている。しかし「ハマ弁」に固執する限り、根本的な転換は望めないのではないか。自校調理方式や、せめて親子調理方式やセンター方式での中学校給食を導入することこそが、問題を根本的に解決する施策といえるのではないか。
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