東京都練馬区立図書館に指定管理者制度を導入するという区の方針に対し、非常勤司書らの労働組合が強く反対し、ストライキを辞さない構えをみせていた。

 この問題では、区側が12月18日夜までに「別の区立図書館で雇用を継続する」などと回答をおこない、予定されていたストライキは回避された。

経緯



 練馬区では区立図書館12館のうち、2018年時点まで9館に指定管理者制度を導入し、民間委託での運営をおこなっている。

 残る3館のうち2館について、指定管理者制度を導入して民間委託に移行する方針が、2018年7月に示された。

 これに対して、司書資格を持つ非常勤職員として雇用されている「図書館専門員」が強く反発した。「指定管理者制度での運営では、運営業者が交代した場合、専門的な運営技術が受け継がれず、サービス低下が危惧される」などとして、図書館専門員の雇用確保と直営館体制の維持を求めた。図書館専門員は1年契約で雇用されているが、勤続20年以上の専門員も多くいるという。

 区は、学校図書館司書への配置換えなどを提案した。しかし図書館専門員側は、「学校図書館司書はさらに雇用が不安定な状況にある」「社会教育としての公共図書館と、学校図書館では、求められる専門性が違う」などとして、受け入れられないという意向を示した。

 そのためストライキも辞さないという状況になった。最終交渉がまとまらなかった場合、12月19日朝から約2時間の時限スト突入を予告していた。

 12月18日夜の最終交渉で、指定管理者制度が導入された後も別の区立図書館で雇用を継続するという方針が示され、交渉が妥結した。そのことで、ストは回避された。

図書館・公共施設の運営を「コスト」扱いする風潮、図書館業務の専門性への無理解も背景か



 この問題については、必ずしも十分な成果とはいえないのかもしれないが一定の結論に落ち着いたのは、一安心ではある。

 しかしその一方で、背後にある問題があまりにも大きすぎるという気がしてならない。図書館司書の雇用条件の不安定さに加え、指定管理者制度・民間委託などが万能かのように公共施設を維持するコストをケチるような風潮、図書館業務の専門性に関する理解不足などの問題が複合した結果、現場にしわ寄せが来ているという印象も受ける。

 これは練馬区が極端に特異な施策をしているというわけではなく、全国的にみられる傾向でもある。こういう傾向についても、何らかの形で見直していくような動きを作っていくことも必要になってくる。
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