京都府城陽市の井関守教育長は12月20日の城陽市議会での答弁で、城陽市で出されている京都府学力テストの学校別成績の開示請求について、「請求人による際限のない開示請求や訴訟対応で、正規の行政事務執行の妨げや超過勤務時間の増加、職員の疲弊を招いている」と言及した。

 教育長は議会終了後「情報公開制度の精神を軽んじるものではない」と補足している。

発言に至った経過



 京都新聞2018年12月21日『「際限ない開示請求、行政執行の妨げ」京都・城陽市教育長が批判』によると、経緯は大筋で以下のようになっているという。

 城陽市では、府学力テストの学校別成績開示を請求したNPO法人がいた。市の情報公開・個人情報保護審査会がいずれも「開示すべき」と市教委に答申した。一方で教育委員会は開示を拒否している。2015年度・16年度の非開示措置について、当該NPO法人は開示を求めて訴訟を起こし係争中だということ。

 非開示を貫く教育委員会の姿勢に対して議会質問があり、このような答弁に至ったという流れだということである。

情報公開制度の一般論にはなじまないのでは



 京都新聞では、以下のような談話が掲載されている。

京都大の曽我部真裕教授(憲法学)の話 情報公開請求に応じるのも、通常業務の範囲。妨げという認識が間違いだ。情報公開請求に対し、権利の乱用かどうかを判断するのは(第三者機関の)審査会で、行政が言うのはおかしい。過去の答申に従っていないことも含め、情報公開制度を軽く見ているのではないか。

京都新聞2018年12月21日 『「際限ない開示請求、行政執行の妨げ」京都・城陽市教育長が批判』


 あくまでも個別案件から切り離しての、情報公開制度の理念という一般的な話なら、それは成り立つのかもしれない。

 しかし今回の個別の事例については、扱っている内容が内容だけに、一般的な情報公開制度の話に落とし込めると具合が悪い。一般論としては正しいかもしれないが、今回の個別の案件に対して一般論をそのまま適用すると、重大な矛盾が出てしまう。

 学力テストの学校別成績を公開しても、平均点や順位が一人歩きして、学校や地域を過剰な競争に巻き込むことになるのは、あちこちの事例からも明らかである。

 他地域では学力テストの学校別成績を公表した結果、平均点が振るわなかった学校に通っている生徒が学習塾や部活動大会などで他校の生徒と顔を合わせた際に、またインターネット掲示板などで、当該校の学校平均点が低いことを理由に揶揄・中傷されるなどの事例が、実際に複数生まれている。また学力テストで学校別成績が振るわなかった教科の担当教員が、校区地域から圧力を受けて転勤に追い込まれた事例も発生している。

 学力テストの学校別成績など、公開することによる不利益が大きいものである。非公開にできるやむを得ない理由に該当する。公開は教育の観点から間違っている。そもそも公開する意味がない。

 市の学校教育の根幹を脅かすものでもあり、市議会答弁という場で発言するかどうかは別としても、それくらい厳しく対応してもやむを得ないのではないか。

 城陽市教委の対応を支持する。
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